2017年07月18日 06:00 公開

高齢者施設で多い、家族からのクレームは

厄介な水虫は放置せずケアを

 季節によっては5人に1人が足水虫に悩まされているとの報告があるように、水虫は年齢や性別に関係なく誰にでも起こりうる「国民病」とも言える病気だ。公衆衛生学の研究者である文京学院大学(埼玉県ふじみ野市)の藤谷克己教授は、先ごろ、高齢者の水虫の実態について講演し、自身が行った研究について解説するとともに、高齢者の水虫対策の重要性を訴えた。

「男性」「高齢者」「足の指の間の皮がむけている」はリスク大

 水虫は、皮膚糸状菌というカビ(白癬菌)による感染症だ。白癬菌が足の裏や足の指の間に感染すると足白癬を引き起こす。白癬菌は人の体から離れても長期間生存可能で、水虫の人から落ちた菌が床やカーペットの上で生き続け、別の人の足の裏や足指の間に付着することで感染が広がっていく。

 感染すると厄介ではあるが、命に関わるものではないため見過ごされがちだ。しかし、見た目が悪いことや生活の質(QOL)が低下するといった問題が起こる。また、高齢者施設の入所者の家族から、入所後に水虫に感染したというクレームは意外に多いという。藤谷教授は、「施設の管理の仕方によって水虫に感染するのかどうかを検証するため調査を実施した」と、研究を行った経緯を説明する。

 今回、藤谷教授らは、10~90歳代の男女159人(男性61人、女性98人)を対象に、白癬菌の保有率を調べた。年代によって白癬菌の感染状況に違いがあるかについても検討するため、一般成人、高齢者向けの通所施設に通う高齢者、施設入所の高齢者を対象とした。

 まず、綿棒で対象者の足裏と指の間をこすり、14日間常温で菌を培養した。また、着用していた靴下でも、同様に菌を培養した。その一部を、さらに常温で14日間培養した。

 その結果、菌の保有者は64歳以下の一般成人で9%、65歳以上の高齢者では55%と、高齢者で多かった。10歳代の人に比べ、65歳以上の高齢者では、菌の保有率が20.44倍とかなり高かった。また、男性に比べ、女性の菌の保有リスクは0.48倍と、男性で高い傾向だった。

 さまざまな因子を解析したところ、「男性」「高齢者」「足の指の間の皮がむけている」といった条件に当てはまる人で、菌の保有率が高い傾向が見られた。

 その一方で、高齢者向けの通所施設に通う高齢者と施設に入所している高齢者との間に、菌の保有率の差は見られなかった。また、よく言われる爪の色の濁りに関しても、濁りの有無による白癬菌保有の差はなかったという。

 藤谷教授は「施設入所と水虫感染との関連性は見られなかった。白癬菌の保有率が高くなる条件を知っておけば、医学的知識の少ない介護者であっても、水虫の有無を判別しやすいのでは」と話す。

小まめな水洗いが有効

 続いて、藤谷教授は、今回の研究での興味深い発見について触れた。一部の白癬菌から、薬が効きにくい「薬剤低感受性株」と呼ばれるタイプが発見されたという。これまでは、白癬菌にはそのようなタイプは無いと思われており、本結果は日本で初めての報告になるそうだ。藤谷教授は「入浴後に、入居している高齢者全員に水虫の軟こう薬を塗布している施設もあるようだ。こうした行為が、薬の効きにくい菌の出現につながる可能性はある」と危惧する。

 高齢者向けの施設は、それぞれの施設ごとにケアの仕方が異なる。藤谷教授は、今回の結果を踏まえて「足環境のケアが、その施設のケア全体の質を表している可能性もあり、入居者のQOLにも大きく影響してくる。水虫は、足を小まめに水洗いすることで、簡単に予防できる。入浴がままならない高齢者であっても、足を洗ったり拭いたりして清潔を保つようなケアを実践してほしい」と訴えた。

(あなたの健康百科編集部)