2017年07月19日 06:00 公開

PM2.5、基準値未満でも健康リスクに

 ここ数年、中国ではPM(Particulate Matter)2.5をはじめとする大気汚染が深刻さを増していて、日本でも警戒が強まっている。抵抗力の弱い小さな子どもや高齢者は、特に注意が必要だ。そんな中、米国から気になる研究結果が報告された。ハーバード大学公衆衛生大学院のグループが、65歳以上の高齢者を全国的に調査したところ、PM2.5やオゾンといった汚染物質を長年吸い込んでいると、たとえ米国の環境基準値を下回る値であっても早期に死亡するリスクが高まることが明らかになったという。詳細は、6月29日発行の医学誌「The New England Journal of Medicine」(2017;376:2513-2522)に掲載されている。

PM2.5やオゾン濃度の上昇で死亡率もアップ

 PM2.5は、大気中に浮遊している直径 2.5μm以下の小さな粒子で、大気汚染物質の1つだ。直径は髪の毛の太さの30分の1程度と非常に小さいため、肺の奥まで入り込みやすく、呼吸器系の病気をはじめ、さまざまな健康への影響が心配されている。環境基準は、米国で年平均値12μg/m3以下、1日平均値35μg/m3以下。日本では、年平均値15μg/m3以下、1日平均値35μg/m3以下と設定されている。

 一方のオゾンは、大気中に自然に存在し、脱臭や殺菌など大気を自浄する働きがある。しかし、濃度が高くなると健康に悪影響を及ぼすことが分かっている。米国では、オゾンの健康被害に関するさまざまな報告を踏まえ、2015年に大気環境基準の値が75ppb(1 ppb は10億分の1) から70ppbに引き下げられた。

 これまでの研究によると、大気汚染への長期的な曝露が死亡率を上げることが示されている。しかし、米国の大気環境基準を下回るレベルの大気汚染についてはほとんど検討されていない。また、調査は都市部に偏っている。

 そこで研究グループは、2000~2012年に、米国の65歳以上の高齢者向け公的医療保険制度である「メディケア」を受給した全ての人(6,092万5,443人)を対象に追跡調査を実施。各対象者の追跡期間の累計(人年)は、4億6,031万521だった。対象者の郵便番号から、居住地のPM2.5とオゾンの年間平均値を算出。PM2.5およびオゾンの増加と死亡リスクとの関連を推定した。

 その結果、PM2.5の濃度が10μg/ m3上がると、全体の死亡率は7.3%上昇した。また、オゾンでは濃度が10ppb増すと、全死亡率が1.1%上昇した。

 PM2.5が12μg/m3未満、オゾンが50ppb未満と、米国の環境基準値を下回る条件に限定して解析したところ、やはりPM2.5の値が 10μg/ m3上昇すると、全死亡率が13.6%上がった。一方のオゾンでも、濃度が10ppb上がると全死亡率が1.0%上昇した。

 さらに、PM2.5に関しては、男性、黒人、低所得者層向けの公的医療保険制度である「メディケイド」の受給資格のある人は、それ以外の人に比べて死亡リスクが高かったという。

 研究グループは、今回の研究について「メディケア受給者である高齢者では、現在の環境基準値を下回る値であっても、PM2.5およびオゾンの暴露によって健康に悪影響が出ることが示された」とし、続けて「米国民は、自分たちの吸っている空気はきれいで、健康を害するようなことはないと考えているだろうが、実際には大気汚染をもっと抑える必要がある」とコメントしている。

大気環境の改善は、世界中で取り組むべき課題。自分自身や大切な人の健康のためにも、大気汚染の問題を常に意識したい。

(あなたの健康百科編集部)