2017年07月20日 06:00 公開

がんと生きる、わたしの物語

受賞者が決定 第7回リリー・オンコロジー・オン・キャンバス

 第7回を迎える「リリー・オンコロジー・オン・キャンバス」は、がんと診断された人やその家族、友人による絵画や写真、絵手紙コンテスト。がんになっても自分らしく生きられる社会を実現することを目指し、2010年に創設された。がんと告知されたときの不安、がんと共生していく決意、そして、がんの経験を通して変化した自分の生き方など、言葉だけでは伝えきれない想いを絵画や写真で表現し、分かち合ってもらう「場」として創設されたという。

がんの覚悟と希望が表現された優秀作品7点が受賞

 がんと向き合う言葉にできない不安や絶望、そして、がんとともに生きていく強い覚悟と希望が表現された作品は、その一つ一つが力強い。作品を通して想いを分かち合うことを目的に、100カ所以上の病院や患者支援団体のイベントで受賞作品の展覧を行っているという。

 今年は、絵画、写真部門のほかに絵手紙部門が新たに加わり、応募総数95点の中から、最優秀賞、優秀賞、オンライン投票によって一般の方に選ばれた一般投票賞が選ばれ、授賞式が行われた。それぞれの部門の最優秀賞、優秀賞、一般投票賞の作品とエッセイ(一部抜粋)を紹介する。


絵画部門<最優秀賞>
「美しく生きる」梅田美智子さん

 主人が亡くなって2人の娘と力を合わせて生きていこうと決心した矢先のこと、今度は私に腫瘍が見つかったのです。すぐに手術しましたが、結果は悪性で、転移を繰り返す厄介なものでした。絶望の淵に立っているようで辛くなるときがあります。でも、人は早い遅いはありますが、いつかはこの世に別れを告げるのです。今、生きていること、支えてくれる人達に、感謝しながら、そして振り返った時、恥じることのない人生にしたい。そんな思いを、この真白い孔雀や花々に込めて描きました。


絵画部門<優秀賞・一般投票賞>
「One Day」 蔵野由紀子さん

 私が舌がん、それも頸部リンパ節への転移の疑いのあるステージ4であると診断されたのは、2015年4月、35歳のときであった。幼子2人を抱えて目の前は真っ暗になった。花の命は短い。この絵の薔薇も既に枯れてしまってもうこの世には存在しない。しかし、それが不幸なこととは思わない。心明るく上を向いて、今にも咲こうとするこの蕾のような瑞々しさで生を全うしたいと願い、この絵を描いた。            

写真部門<最優秀賞>
「その先に」 砂原涼志さん

 19歳のときに「血液のがん」といわれました。辛い治療が半年続き終了しましたが、周りには自分ががんだとは言えませんでした。がん発症から5年が経ち病気は完治し、自分ががんだったことを周りに言えるようになった。そんな中、職場の先輩と付き合い、病気のことを伝え、プロポーズも受け入れてくれました。今後何があっても必死に生き、彼女を追いかけ一緒に歩いていきたいと思います。あの時頑張ったから今がある、この先の未来があるんだと思います。         


写真部門<優秀賞>
「優しいまなざし」 森井邦生さん

 数年前から肺気腫で治療していましたが、その後、肺がんと診断され、既にリンパ節にも転移していました。退院後は毎日カメラを持って出かけ、息苦しくてもリハビリと思って足が棒になるまで歩き回りました。そんなある日、奈良国立博物館の横でバッタリと出会ったのがこの鹿です。慈愛に満ちた気品のある優しいまなざしにしばし息を飲み、思わずシャッターを切りました。


写真部門<一般投票賞>
「母に見せたい景色」 須賀研介さん

 高校卒業と同時に北海道の大学に進学した私がホームシックになったとき、母が「これでお母さんが見たことのない景色を撮って見せてね」と買ってくれたのが、私とカメラとの出会いでした。そして、その年の暮れに母の乳がんが見つかりました。その後、母は元気に回復し、北海道の雄大な景色を見るために旅行もできるようになりました。「母に健康をありがとう」と、私は今も、この1枚が誰かの力になればいいと願いながらシャッターを切っています。


絵手紙部門<最優秀賞・一般投票賞>
「ウインクしている わたしのおっぱい」 塩田陽子さん

 私の左のおっぱいは私を離れ、先に神様のもとへ行きました。3人の子供たちに、よく尽くしてくれた私のおっぱい。手術から4年たちましたが、今でも怖くて、ちゃんと胸を見ることはできません。好きだった温泉にも、まだ入る勇気が持てません。でも、私のおっぱいは切除されたのではなく、ウインクしているんだ!と思うと、なんだか愛嬌があって愛しく思えてくるのです。


絵手紙部門<優秀賞>
「歩く」 津田恭子さん

 「もう新しい靴はいらんから」2012年3月の午後、母は、最寄りのデパートの広告を眺めながら言った。ステージⅢに近い大腸がんと診断され、即刻、腹腔鏡手術を勧められた。持ち前のパワーで先生も驚くほどの快復力を見せていった。術後5年目に入る母は、病気というおりから解き放たれて、自分の身体と真摯に向かい合っている。「新しい靴を買いに行こうかな」と私に向かって笑いかける母に、笑顔で大きく頷いた。

 (あなたの健康百科編集部)