2017年08月09日 06:00 公開

誤診されがちな高齢者てんかん

 てんかんは、激しい全身痙攣(けいれん)を起こす病気というイメージがあるが、高齢者のてんかんでは痙攣を生じず、突然、意識を失うケースが多いという。高齢者てんかんは高齢化が進む日本で増加傾向にあり、最近、多発する高齢ドライバーの不可解な事故に関係しているとの説もある。先日、東京都で開かれたてんかんプレスセミナー(主催:大塚製薬/ユーシービージャパン)では、朝霞台中央総合病院(埼玉県)脳卒中・てんかんセンターの久保田有一センター長がこの病気の概要を紹介し、「高齢者てんかんは地味な発作が多いため診断が難しく、認知症やうつ病と間違われることも多い。その特殊性を十分理解することが重要だ」と述べた。

地味な発作が特徴

 急速に高齢化が進む日本において、高齢者のてんかんは増加傾向にあり、60歳以降の発症率は約1.5%とされる。高齢者のてんかんは、脳卒中や外傷などの後遺症として現れるもののほか、加齢以外に特別な原因が見当たらないものがある。

 加齢に伴うてんかんの症状は複雑部分発作といい、①ボーっとする、②口をモグモグさせたり手足をモゾモゾ動かしたりする、③意味不明の発言をする、④前兆なく突然、意識障害を起こす、⑤発作後のもうろう状態が長く続き、意識回復まで時間がかかる、⑥発作頻度が少ない―といった地味な発作が特徴だ。複雑部分発作では本人に発作中の記憶がないため、家族や介護者が発作の様子を説明すること、発作時の様子をスマートフォンで動画撮影しておくことが診断に役立つという。

 診断では、脳波検査で側頭部に局在する徐波を見つけ出すことが決め手になる。しかし、1回の検査では発見できない場合が多く、診断を確定するためには、「ビデオ脳波モニタリング」が必要となる。これは、脳波電極を付けたまま1週間、病院の個室で生活し、脳波測定と患者のビデオ録画を行うもの。久保田センター長は「高齢者てんかんの診断は、脳波だけでは難しく、特徴的な症状などを問診でうまく聞き出すことが重要だ」と語る。

うつ病や認知症と診断されてしまうことも

 同センターを受診した60歳代男性のケースでは、不可解な症状と意識障害が見られた。ビデオ脳波モニタリングで脳波異常が見つかり、高齢者てんかんと診断された。抗てんかん薬治療で回復し、元の生活を取り戻したという。

 実はこの男性、退職の1年後に妻を亡くしたが、そのころに発症。他院でうつ病と診断され、治療を受けたが回復しなかった。別の医療機関を受診したところ、今度は認知症と診断され、久保田センター長の施設を訪れて、ようやく診断がついたのだ。同センター長は「このように、高齢者てんかんがうつ病や認知症と誤って診断されるケースは少なくないのではないか」と指摘する。

 また、多発している高齢ドライバーの不可解な事故に高齢者てんかんが関係している可能性もあるという。「前方不注意」で追突事故を2度起こした67歳男性は、近隣の神経内科で検査を受けたが「異常なし」と言われたという。このため、同センターで詳しい検査を受けたところ、高齢者てんかんであることが判明した。
 同センター長は「高齢者の自動車事故の原因として、高齢者てんかんが関与しているケースがあるかもしれない」と述べた。

 高齢者てんかんは、確実な診断に基づいて治療を行えば効果は大きく、抗てんかん薬で発作を抑制することもできる。特に、新しい抗てんかん薬は、1剤での治療が可能で服薬を継続しやすいので、高齢者にとっては重要な選択肢の1つになるという。

 高齢者てんかんは診断の難しさゆえに、適切な治療を受けていない患者の多い病気である。高齢者の介護に当たる家族などが知っておくべき病気かもしれない。

(あなたの健康百科編集部)