2017年08月22日 06:00 公開

9つのリスク回避で認知症は予防可能?

医学ジャーナル誌「Lancet」からの報告

 認知症にはなりたくないと思っていても、予防のために何をすべきなのか、分からないことも多い。そもそも、認知症は予防できるのだろうか?英国の医学ジャーナル「Lancet」の認知症予防・介入・ケア委員会は、生涯を通じて9つのリスクをコントロールし、脳の健康状態を改善できれば、認知症の35%は予防できる可能性があるとする専門家24人からなる研究グループの見解をまとめ、アルツハイマー協会国際会議2017(英・ロンドン)で発表するとともに、Lancet(2017年7月20日オンライン版)で同時公開した。

回避可能な9つのリスクを検討

 最新の推計によると、全世界の2015年の認知症患者数は約4,700万人で、低・中所得国における急激な人口増加を背景に、2050年には約3倍になるとみられている。認知症に伴う総コストは年間8,180億ドル(2015年)で、医療以外の介護に当たる家族や社会の負担となるコストが約85%を占めることから、社会を挙げての対策が急がれている。

 認知症を発症するのは主に65歳超の高年期であるが、脳の変化はその数年前から始まっていることが多い。そこで、小児期(18歳未満)や中年期(45〜65歳)のリスク因子にも目を向けて認知症予防に取り組む必要がある。

 研究グループは小児期、中年期、高年期における9つの"修正可能な"リスクとして、小児期では①教育期間の短さ(15歳超での教育が継続されず小学校が最終学歴)、中・高年期では②高血圧③肥満④難聴、高年期では⑤喫煙⑥抑うつ⑦運動不足⑧社会的孤立⑨糖尿病を挙げ、各リスク因子の認知症発症への影響をモデル化し、完全に排除できた場合に認知症症例全体の何パーセントの予防につながるかを推算した。

 その結果、これら9つのリスク因子全てを完全に排除できれば、認知症の35%を予防できる可能性が示された。

 認知症の主要な遺伝学的リスクとして、認知症の危険要素と見なされているアポリポ蛋白(apo)Eのε4アレルの存在がある。このapoE ε4を標的とする治療方法が確立された場合でも、それにより予防可能な割合は認知症全体の約7%とみられており、上記のリスク回避の重要性がうかがえた。

 すべての認知症の発症遅延・予防につながるわけではないが、この予防戦略の効果を最大化するには9つのリスクに対する安全かつ効率的な対策をとる必要があるとしている。

(あなたの健康百科編集部)