2017年08月29日 06:00 公開

怖い?怖くない? ADHDの薬物治療

乱用・依存といった「物質使用障害」を抑制

 注意欠如・多動性障害(ADHD)を根本的に治療することは、現在の医療では難しい。しかし、不注意・多動性・衝動性といった特性ゆえ、周囲の環境とのバランスが悪いと感じるようなら、心理・社会的治療や薬物治療でそのバランスを改善することはできる。ただ、過去の研究で、ADHD患者は、アルコールや薬などへの依存が強くなる「物質使用障害」が現れるリスクが高いと報告されていることから、薬物治療への懸念も残る。そのような中、米国のインディアナ大学の研究グループから、ADHDの薬物治療に関する研究結果が報告された。10代および成人のADHD患者に薬物治療を行っても、物質使用障害に陥るリスクは低いことが分かったという。詳細は、6月29日発行の医学誌「The American Journal of Psychiatry」(電子版)に掲載されている。

男性では長期的にもリスクが低下

 「物質使用障害」は、アルコールや薬物、たばこなど、何らかの物質が体内に入り、脳に影響を及ぼすことで生じる精神の障害で、特定の物質に対して強烈な渇望を抱くようになる。物質使用障害は、ADHD患者の死亡率を上昇させる主要な原因とも言われているが、ADHD治療薬と物質使用障害との関連は明らかにされていない。

 そこで、研究グループは、ADHDの薬物治療と物質使用障害との短期的、長期的な関連について調べた。

 調査対象となったのは、10代および成人のADHD患者299万3,887人(うち女性は47.2%)。ADHD治療薬として、精神刺激薬またはアトモキセチンを処方されている患者に生じた物質使用障害のリスク(物質使用障害による救急外来の受診)を、薬が処方されていない患者と比較した。

 その結果、ADHD治療薬を処方された集団は、処方されていない集団と比較して、物質使用障害のリスクが、男性患者で35%、女性患者でも31%低かった。

 さらに、処方から2年後の物質使用障害のリスクについて調べたところ、薬物治療を受けた男性患者群は、受けていなかった群に比べて、そのリスクが19%低い値だった。また、女性患者群の物質使用障害リスクは14%低下していた。

 これらの結果を踏まえ研究グループは、「10代または成人のADHD患者が薬物治療を受けたからといって、物質使用障害に陥る可能性は低そうだ。むしろ、薬物治療を行うことで物質使用障害の発生リスクは低下する。少なくとも男性では、長期的に見てもそのリスクは高いものではない」とコメントしている。

(あなたの健康百科編集部)