2017年09月06日 06:00 公開

重度精神疾患患者の平均余命は20年短縮

 厚生労働省が示す2011年の患者調査では、1年以上にわたり入院する精神疾患患者は約20万人。このうち、死亡を含めると毎年5万人が退院し、新たに5万人が長期入院に移行している。このほど、東京大学精神神経科の近藤伸介特任講師らのグループは、東京都三鷹市の福祉サービス利用者を対象に調査を実施。長期入院を経て退院し、地域生活に戻った重度精神疾患患者は、一般の人に比べて平均余命が20年以上短いことを明らかにした。詳細は、8月11日発行の医学誌「British Journal of Psychiatry Open」(2017;3:193-195)に掲載されている。

心血管疾患、自殺による死亡率は一般の5~7倍

 研究グループは、精神障害者の退院促進・地域生活支援を行う社会福祉法人巣立ち会(理事長=田尾有樹子さん)と共同で、1992~2015 年の24年間に精神科病院での長期入院を経て退院し、地域生活に戻った福祉サービス利用の重度精神疾患患者254人を追跡調査した。

 追跡年数の累計は1,983人・年。対象者のサービス利用開始時の平均年齢は50歳だった。2015年末までに45人(男性31人、女性14人)の死亡が確認され、このうち39人(87%)が統合失調症だった。

 死亡した人の精神科入院期間は平均15.6年で、33人(73%)が身体的な病気による死亡だった。死亡時の年齢は、平均63歳(男性63.2歳、女性62.6歳)。病気による早期死亡で失われた年数は22.2年(男性20.5年、女性26年)だった。

 全標準化死亡比(SMR)は3.28で、性別のSMRは男性が 2.85、女性が4.98と、女性の方が一般の人との差が大きかった。死因別SMRでは心血管疾患が5.09、自殺が7.38と、いずれも一般の人よりも明らかに高かった。

 今回の結果について、研究グループは、「重度精神疾患障害者の早期死亡が、国内ではじめて示された。精神障害者の健康格差を啓発するための第一歩としたい」と強調。しかし、一方で「今回の対象者の60%が精神科以外に内科も定期的に受診していた。一見すると、医療へのアクセスが保証されているようだが、統合的かつ効果的な医療が提供されていたとは限らない」と指摘し、「今後は、精神障害者の身体的健康に関する実態の把握と、適切なケアの提供が進むことが望まれる」と課題を示した。

※ SMR (standard mortality ratio):予想死亡数に対する実際の死亡数の比。予想死亡数は、対象となる集団の構成要素を加味した上で基準死亡率を当てはめ算出。数値が1より明らかに大きいと、一般の人より死亡率が高いことを示す

(あなたの健康百科編集部)