2017年09月14日 06:00 公開

がん患者の緩和ケア、家族内の葛藤も

 命に関わるような病気に直面している患者やその家族に対して、心身の苦痛を和らげてくれるのが緩和ケア。進行がんを患う家族を抱えたとき、緩和ケアを選択肢として考える人もいるだろう。このほど、筑波大学と東北大学などの研究グループが、緩和ケア病棟で最期を迎えた進行がん患者の家族が経験した家族内の葛藤の実態について調査をしたところ、家族の約40%が何らかの葛藤を経験していたことが分かったという。詳細は、7月25日発行の医学誌「Psycho-Oncology」(電子版)に掲載されている。

家族の年齢や関係性、コミュニケーションの状況が葛藤を左右

 がん患者の家族が経験する葛藤は、患者や家族の生活の質(QOL)に影響すると考えられている。しかし、がん患者の家族が具体的にどのような葛藤を経験しているのか、どのような家族に葛藤が多いのかということは明らかになっていなかった。

 そこで今回、研究グループは、緩和ケア病棟で亡くなった患者の遺族を対象に、彼らが経験した葛藤の実態について検証を行った。解析の対象となった遺族は458人だった。

 その結果、家族の42.2%が、家族間での意見の対立などの「家族内の葛藤」を少なくとも1回は経験したと回答した。例えば、「本来果たすべき役割を十分にしていない家族がいると思うことがあった」について、20%以上の家族が「とても良くあった」「よくあった」「時々あった」のいずれかに同意した。また、患者の治療方針に関して「意見が合わないことがあった」についても、同様に20%以上が同意した。

 また、家族の年齢が若い場合、家族内に治療に関して自分の意見を強く主張する人がいた場合、病気後に家族内でのコミュニケーションが不十分だった場合に、家族内の葛藤が増えた。

 その一方で、病気前に交流がなかった家族と連絡を取るようになった場合には、家族内の葛藤が減った。

 これらの結果について、研究グループは、「緩和ケア病棟で最期を迎えた進行がん患者の家族は、家族内で葛藤を経験することが少なくないことが分かった。また、家族の年齢、家族内の関係性やコミュニケーションの状況が、家族内の葛藤の有無に関係する可能性がある」と述べた。その上で、「ただし、今回の研究では、患者が亡くなった後に家族の記憶を頼りに回答してもらっている点、病気になる前の家族内の関係性やコミュニケーションの状況が評価できていない点、日本国内で行った調査のため、国や文化による違いが評価できていない点で限界がある」とコメントした。

 さらに、研究グループは、「病気になる前の家族間の関係性やコミュニケーションの状況が、病気になった後も続いて、家族内の葛藤に影響するのか、また、患者を看取る場所によって家族内の葛藤の経験が異なるのかについて確認していく必要がある」と今後の課題を示した。

(あなたの健康百科編集部)