2017年09月28日 06:00 公開

臍帯血の提供は公的機関で

「臍帯血(さいたいけつ)」という耳慣れない言葉がマスコミを騒がせている。今年の5月、民間クリニックが他人の臍帯血(経営破綻した臍帯血プライベートバンクから流出したもの)を使って、無届けの再生医療を行ったという事件があったためだ。臍帯血とは何か、なぜ臍帯血バンクが必要なのか、プライベートな臍帯血バンクとはどのようなものなのか。赤ちゃんを出産予定のお母さんにぜひ、知っておいてほしい点を、厚生労働省の解説に基づいて紹介する。

白血病や再生不良性貧血の治療に役立つ

 臍帯血とは、臍帯(へその緒)と胎盤に含まれている血液のことで、出産の時に採取される。臍帯血には、造血幹細胞(赤血球や白血球などの血液を造る細胞)が多く含まれている。

 白血病や再生不良性貧血など血液の病気の治療法の1つに、造血幹細胞移植がある。臍帯血から取り出した造血幹細胞を患者に移植して、造血機能を再生させる治療法である。臍帯血を用いた造血幹細胞移植を行うためには、白血球の型(HLA)が一致している必要があるが、血縁者でないと一致する確率は数百分の1〜数万分の1程度である。

 より多くの患者が公平に移植を受けられるようにするには、①広く国民から臍帯血の提供者(ドナー)を募る②採取した臍帯血を調整・凍結保存する③HLAが適合する臍帯血を患者へ提供する−ことが必要となる。骨髄バンクなどと同様の、バンク制度が不可欠なのである。

 造血幹細胞移植法に基づき厚生労働大臣の許可を得た臍帯血供給事業者(公的臍帯血バンク)は、全国に6カ所あり、臍帯血の提供体制を構築している。公的臍帯血バンクが保管している臍帯血は1万1,287件(今年3月現在)で、そこからHLAが適合する臍帯血が見つかる確率は90%以上となっている。昨年度は年間1,347件の移植が行われた。

臍帯血プライベートバンクでは費用が必要

 つまり、臍帯血は白血病や再生不良性貧血などで苦しむ患者さんへの"善意の贈り物"であり、公的臍帯血バンクはその受け皿なのである。厚労省は「赤ちゃんを出産予定のお母さんへ」と題するHPを作成し、臍帯血の提供を呼びかけている。

 ただし、臍帯血を採取し、品質を保ちながら保管するためには、国の基準を守る必要がある。そのため、出産時に臍帯血を提供できる産科医療機関は、公的臍帯血バンクと提携した産科医療機関に限定されている。

 公的臍帯血バンク以外に、民間の臍帯血バンク(臍帯血プライベートバンク)がある。本人や家族の病気の治療のため、現在はまだ医療技術として確立していない再生医療などを将来利用するため、委託契約を結び保管費用を支払って臍帯血を保存してもらうのだ。

 臍帯血プライベートバンクは、公的臍帯血バンクとは違って、国から認可を得た業者ではない。このため、臍帯血の調整・保存などは国が定めた基準で行われているとは限らない。また、公的バンクで保管されている臍帯血は、お母さんたちから無償で提供してもらい、病気で移植を必要とする患者さんのために使われるものだ。一方、プライベートバンクの臍帯血は、本人や家族が将来使うものであり、当然、保管のための費用を支払う必要がある。

違法な治療に臍帯血が使われたケースも

 今年の5月、東京や大阪などの民間クリニックが、他人の臍帯血(経営破綻した臍帯血プライベートバンクから流出したもの)を使い、がん治療やアンチエイジングなどの名目で、無届けの再生医療を行っていたという事件があった。厚労省は6月、違法な再生医療を行ったクリニック11カ所に再生医療の一時停止命令を出している。また、8月には関わった販売業者と医師合わせて6人が、再生医療安全性確保法違反容疑で逮捕された。

 もし、臍帯血プライベートバンクと保管契約を結んで、臍帯血の保存を選択する場合には、臍帯血の安全性や契約終了後にお母さんやお子さんに無断で提供されないかなどを慎重に確認すべきであろう。

 厚労省では「臍帯血を公的臍帯血バンクに提供したい場合、出産予定の産科医療機関で臍帯血を提供することができるかどうかについては、造血幹細胞移植情報サービスのサイトを参考にしてほしい」としている。

(あなたの健康百科編集部)