2017年10月26日 06:00 公開

お酒で顔が赤くなる人が危ないがんとは

膀胱がんの発症リスクに差

 ビール片手に真っ赤な顔で盛り上がる、飲み会好きなサラリーマンたち。よく目にする光景かもしれない。そんな人たちの心にちょっとブレーキがかかりそうな新たな研究結果が、このほど国立がん研究センターが実施する「JPHC研究」から報告された。男性では、飲酒で顔が赤くなるかどうかで、膀胱がんの発症リスクに差が見られたという。研究の詳細は、9月5日発行の医学誌「International Journal Of Cancer」(電子版)に掲載されている。

日本人の約半数がお酒に弱い

 お酒を飲むと、体内に取り込まれたアルコールは腸で吸収された後、酵素の働きでアセトアルデヒドという物質に分解され、次に酢酸に分解され代謝される。アセトアルデヒドを分解する酵素の働きが強い欧米人と違い、日本人の約半数はその働きが弱いことが分かっている。

 そのため日本人は、飲酒によりアセトアルデヒドが体内に蓄積しやすく、アセトアルデヒドの作用で顔が赤くなりやすい。すなわち、お酒を飲むと顔が赤くなる人は、飲酒によってアセトアルデヒドの影響を受ける可能性が高い。

 これまでの研究で、アセトアルデヒドには発がん性があることが分かっている。ところが、主に欧米人を対象とした海外の複数の研究結果をまとめた解析では、飲酒と膀胱がん罹患の関連はないと報告されている。

飲酒で顔が赤くなるか否かで、膀胱がんの発症リスクに差

 アルコールを分解する酵素の働きは、日本人と欧米人で異なることから、日本人では飲酒が膀胱がん罹患に影響を及ぼすかもしれない。そこで研究グループは、40~69歳の男女9万5,915人を追跡。飲酒と膀胱がん罹患の関連を、飲酒で顔が赤くなる人とならない人に分けて検討した。

 調査開始時に、飲酒習慣についてアンケートを実施。アルコールの量[ビール中瓶(500mL)1本で、アルコール20g]により、以下の5つのグループ、「ほとんど飲まない(月に1~3回以下)」「週150g以下飲む」「週151~300g飲む」「週301~450g飲む」「週451g以上飲む」―に分けた。また、「飲酒するとすぐに顔が赤くなりますか?」と質問し、顔が赤くなるかならないかについても調べた。

 平均で約18年の追跡期間中に、464人(男性354人、女性110人)が膀胱がんを発症した。年齢、性、住まいの地域の偏りや、喫煙による影響を調整して、飲酒と膀胱がん発症との関連を検討した。

 その結果、飲酒で顔が赤くなる男性では、お酒をほとんど飲まないグループに比べて、飲酒量が週に151~300gのグループで、膀胱がんのリスクが1.67倍に上昇していた。しかし、それ以上お酒を飲むグループでは、膀胱がんのリスクは上昇していなかった。

 一方、飲酒で顔が赤くならない男性では、どの飲酒グループにおいても膀胱がんのリスク上昇は見られなかった。なお、女性に関しては、膀胱がんの発症数が少なく、飲酒者も少ないことから解析を行わなかった。

多量飲酒はリスク

 今回の研究結果を踏まえ、研究グループは「飲酒で顔が赤くなる男性とならない男性で、飲酒による膀胱がんへの影響が異なることから、アセトアルデヒドが膀胱がんの罹患と関連している可能性がある」とコメント。

 さらに、アルコールの摂取量が301g以上のグループで膀胱がんのリスクが上昇しなかった点について、研究グループは「理由としては、飲酒で顔が赤くなるという自覚症状と、遺伝子によって規定されるアセトアルデヒド分解能力は、完全には一致しないことが分かっている。飲酒で顔が赤くなると答えた大量飲酒者の中には、遺伝的にはアセトアルデヒド分解能力が高い人が多数混ざっていた可能性がある」と推察。その上で、「大量に飲酒することで膀胱がんへの影響が弱まるということではない。多量飲酒は、がんのみならず、循環器疾患や死亡のリスクを上昇させる」と警鐘を鳴らした。

(あなたの健康百科編集部)