2017年11月08日 06:00 公開

健康百科レントゲン検定

あなたはどれくらい知っていますか?

 11月8日はレントゲンの日。ヴィルヘルム・コンラート・レントゲンが1895年のこの日に発見したX線は、体内を透視する医療検査に幅広く利用され、現在も進歩を続けている。X線やCTは日常診療に欠かせない重要な検査となったが、そこに被ばくのリスクがあることも知っておく必要がある。レントゲンの日を記念して開催された市民公開講座「医療被ばく低減の取り組み"Japan Safe Radiology"」(日本医学放射線学会・日本学術会議共催)から、東海大学医学部放射線医学教授の今井裕氏らの講演に基づきクイズを出題する。

設問
問1 最初のX線写真は、レントゲンの妻ベルタの手を撮影したものである。 YES/NO
問2 レントゲンは第1回のノーベル医学・生理学賞の受賞者である。 YES/NO
問3 日本はCTやMRIなどの大型診断機器の数が世界一で、放射線科医の数も多い。 YES/NO
問4 医療費の増加は大きな社会問題だが、画像診断に要する費用も増大しており、最近のデータでは年間1兆円を超えている。 YES/NO
問5 医療による被ばくを抑えることも放射線科医の重要な仕事である。中でもCTやMRIによる被ばくが多く、その線量管理が課題となっている。 YES/NO
問6 医療による放射線被ばくの量は、自然界にもともと存在している自然放射線による被ばくとほぼ同等である。 YES/NO
問7 日本で1年間にCT検査を受けた人数は約3,000万人である。 YES/NO
問8 CT検査による放射線被ばくは、単純X線検査と同程度である。 YES/NO
問9 CT検査に伴う放射線被ばくでがんが増えるかどうかについては、まだ定説がない。 YES/NO
問10 CT検査による被ばくを低減するには、医師・医学生の教育が重要だ。 YES/NO

解説

問1)最初のX線写真は、レントゲンの妻ベルタの手を撮影したものである。

 YES。最初のX線写真には、レントゲンの妻ベルタの手の外形、骨、指輪が映っていて、X線は物質によって透過度の異なることを明らかにした。X線は「生きた人間が透けて見える魔法のような写真」として一大センセーションを巻き起こし、レントゲンには講演依頼が殺到したようだ。

問2) レントゲンは第1回のノーベル医学・生理学賞の受賞者である。

 NO。レントゲンはドイツやスイスで活躍した物理学者で、物理研究の一環でX線を発見した。これは大きな反響を巻き起こし、レントゲンは1901年の第1回ノーベル物理学賞を受賞した。しかし彼は、受賞講演をせずにスウェーデンから帰国した。彼は医学へのX線の応用に意欲的だったが、勤務先のビュルツブルク大学の医学部教授らの協力が得られず、成果を上げることができなかった。その晩年は病魔との戦いもあり、必ずしも幸福なものではなかったという。

問3) 日本はCTやMRIなどの大型診断機器の数では世界一で、放射線科医の数も多い。

 NO。日本の人口100万人当たりのCT数は101台、2位オーストラリアの54台を大きく引き離す断然1位である。同じくMRIも、日本は2位米国の1.5倍と、大型診断機器の数は圧倒的に多い。しかし、放射線科医の数は不足しており、専門医が診断したわけではない画像がたくさん存在する。現在の2倍の放射線科医が必要であるという。

問4)医療費の増加は大きな社会問題になっているが、画像診断に要する費用も増大しており、最近のデータでは年間1兆円を超えている。

 YES。画像診断に要する医療費は2014年度には1兆2,400億円に達し、医療費全体の5%弱を占めている。そのうちCTは6,000億円で、1998年の倍になっている。無駄な検査が行われていないか、医療者と患者がともに考えることが必要な時代になっている。

問5)医療による被ばくを抑えることも放射線科医の重要な仕事である。中でもCTやMRIによる被ばくが多く、その線量管理が課題となっている。

 NO。MRIは磁石と電波を用いて画像を得る方法で、放射線を使わないので被ばくはない。一方CTは、X線を全方向(360度)から照射し輪切り画像を得る検査で、被ばくを伴う。日本は世界一のCT大国であり、それによる被ばく低減を目指し日本医学放射線学会は"Japan Safe Radiology"の取り組みを進めている。

問6)医療による放射線被ばくの量は、自然界にもともと存在している自然放射線による被ばくとほぼ同等である。

 NO。2011年の原子力安全協会のデータでは、日本人の年間被ばく量は約6.0ミリシーベルト(mSv)。このうち医療被ばくは65%(3.87mSv)を占めていた。特に、CT検査による被ばくが最も多くなっている。野菜などの食品、大気、大地、地球外から飛来する宇宙線などに含まれる自然放射線は2.09mSvだった。

問7)日本で1年間にCT検査を受けた人数は約3,000万人である。

 YES。群馬大学の対馬教授らの推計によると、日本における年間CT検査数は6,250万件。検査患者数は2,990万人だという。人口100万人当たりのCT台数は日本が世界一だが、検査数の多さも世界的に見て突出している。

問8)CT検査による放射線被ばくは、単純X線検査と同程度である。

 NO。単純X線検査による放射線被ばくは0.05mSv、CT検査は2〜20mSvといわれている。その値は頭部や頸部のCTで低く、心臓CTや造影剤静注後に肝臓を3、4回撮影する肝臓ダイナミックCTで高くなっている。

問9)CT検査による放射線被ばくでがんが増えるかどうかについては、まだ定説がない。

 YES。CT検査を行った小児でのがん発症を調べた検討でも、関係ありとする論文となしとする論文がある。22歳未満の18万人を分析したPearceは、白血病や脳腫瘍が増えたと報告。19歳以下の1,000万人を対象にしたMathewsらの検討では、1回以上のCT検査受診者でがんの罹患率が24%高いとした。これに対して10歳以下の67,000人を調査したJournyら、15歳以下の45,000人を調べたKrilleらは、発がんの素因をもつ人を除くと両者の関係は明らかでないと述べた。CT検査と発がんの関係は、今も明確になっていないのである。

問10)CT検査による被ばくを低減するためには、医師・医学生の教育が重要となる。

 YES。CT実施に正当性があるか(他の検査ではダメか、CTで得られるベネフィットが被ばくのリスクを上回っているか)を、医療者は常に考えるべきである。実際、広島大学では医学科と歯学科の学生に、放射線生物学・放射線健康リスク科学という講義を行っている。同時に、患者個々の被ばく履歴を一元管理し、総被ばく量を把握する試みも始まっているという。また、X線量を減らして撮影した画像を新しい方法で再構成法する超低線量CTも開発されるなど、被ばく低減の取り組みは多面的に進められている。

(あなたの健康百科編集部)