2017年11月09日 06:00 公開

2年間で350人がおたふくかぜから難聴に

一刻も早い定期接種の再開を訴える

 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は子どもの頃にかかることが多く、比較的知名度の高い病気であるが、その合併症の深刻さについてはあまり知られていない。国立成育医療研究センター感覚器・形態外科部耳鼻咽喉科医長の守本倫子氏は10月26日、東京都で開かれたプレスセミナーで、おたふくかぜの合併症である難聴に関する全国調査の結果を報告。調査した2年間で348人がおたふくかぜによる難聴と診断されたとし、おたふくかぜワクチン(以下、ワクチン)による予防の重要性を訴えた。

9割以上が高度以上の難聴

 今回のセミナーは、ワクチンで防げる病気(VPD)の啓発活動を行うNPO法人「VPDを知って、子どもを守ろうの会」が実施。日本耳鼻咽喉科学会が全国約3,500の医療施設に実施した調査の結果が報告され、2015年1月~16年12月の2年間に少なくとも348人が、おたふくかぜによる難聴と診断されたことが明らかになった。

 348人の中で、最終的に片耳の難聴と診断された患者287人の聴力を調べると、約9割にあたる261人が、「非常に大きい声か補聴器を用いないと会話が聞こえない」とされる高度難聴、あるいは「補聴器でも聞き取れないことが多い」とされる重度難聴であることが判明した()。最終的に両耳の難聴と診断された16人中13人も、高度または重度難聴であったという。

図. おたふくかぜによる難聴で最終的に片耳の難聴と診断された患者287人の最終聴力レベル

(プレスセミナー発表資料を基に作成)

 守本氏は「今回の調査は耳鼻咽喉科の医師だけを対象としたため、実際におたふくかぜから難聴になる患者はさらに多いと推測される。多くの人に、おたふくかぜによる難聴の深刻さやワクチンの重要性を知ってほしい」と訴えた。

定期接種でないのは先進国で日本だけ

 ワクチンの役割や日本の状況については、同会副理事長でふじおか小児科(大阪府)院長の藤岡雅司氏が説明した。

 おたふくかぜに対するワクチンは、1989年、麻疹、風疹との混合ワクチンとして日本でも定期接種されるようになった。だが、1993年、混合ワクチンによって無菌性髄膜炎が多数発生するとされ、実施が中止された。

 以降、現在までワクチンは希望者のみが接種する扱いとなっており、一部自治体を除いて接種のための費用は補助されていない。

 しかし、世界保健機関のデータによれば、世界の先進国でワクチンが定期接種されていないのは日本だけだという。

メリットとリスクを比べれば定期接種は妥当

 そこで藤岡氏は、ワクチン未接種で感染したおたふくかぜによる無菌性髄膜炎と、ワクチンが原因の無菌性髄膜炎の発生率を紹介した。すると、前者が1~10%、後者が0.01~0.1%と大きな差が出た。また、おたふくかぜによる難聴の発生率は0.01~0.5%であった()。

表. おたふくかぜの自然感染による合併症とワクチンによる副反応の発生率

(臨床と微生物 2005; 32; 481-484を基に作成)

 このことから、同氏は「ワクチンによって無菌性髄膜炎が発生する可能性は確かにあるが、正しく治療すれば後遺症は出ない。一方、ワクチンを接種しないことで発生する難聴の治療法はなく、後遺症も出る」と指摘。「ワクチンを接種するメリットとリスクを比較すれば、接種は合理的といえる。国は一刻も早くワクチンの定期接種化を再開するべきだ」と語った。

(あなたの健康百科編集部)