2017年11月29日 06:00 公開

変色しないリンゴが米国で販売開始

―注目される遺伝子組み換え食品への消費者の反応

 今年(2017年)11月から、米国北西部を皮切りに遺伝子組み換えリンゴのスライスパックが食品店の棚に並ぶことになった。遺伝子操作で生まれた"Arctic apple"は、皮をむいて置いておいても茶色に変色することがない。開発企業はカナダのOkanagan Specialty Fruits社(Okanagan社)。11月9日号のNature誌にレポートが掲載された。

消費者の反応から「手がかり」をつかもうと関連企業が注目

 2003年にArctic appleが最初にテスト栽培されてから、遺伝子組み換え食品のレパートリーは、遺伝子組み換えイースト菌に製造させた大豆たんぱくでできた大豆ミートバーガー、魚の幹細胞から作った切り身、CRISPR技術を使った変色しないマッシュルームなど増えているが、その多くはまだ市場に届いていない。Arctic appleは2015年に米国農務省の認可を取得した。しかし、従来のような加工品(成分)ではなく、生で食べるリンゴそのものであることから、農家や市民団体の反発も強く、安全性について論議を呼んできた。こうした背景から、多くのバイオ企業がArctic appleに対する消費者の受け入れ状況を注視し、遺伝子組み換え食品の今後の動向に関する「手がかり」をつかもうと躍起になっているという。

 同レポートで「もしこのリンゴが売れれば、他の遺伝子組み換え食品にも道を開くことになる」と指摘するのは、ペンシルベニア州立大学の植物病理学者であるYinong Yang氏。Yang氏は、変色しないマッシュルームの開発者でもあり、それが農家に受け入れられる日を待ち望んでいる。また、Lawrence Berkeley National Laboratoryの生物化学プログラム監督者のMary Maxon氏も、発売を歓迎している1人だ。「このリンゴは、人々が初めて口にする遺伝子組み換え体(GMO)ではないが、初めて価値を実感できるGMOかもしれない」とコメントしている。

 明確な表示がないことを問題視する声も

 一方で、Okanagan社はリンゴの製造方法に関する消費者への情報提供が不十分であると指摘する向きもある。販売会社は"GMO"とパックに明示していない。表示義務がないからだ。ただし、スマートフォンでスキャンすればオンラインで情報が得られるQRコードは付いている。「しかし、すべての人がスマートフォンを持っているわけではない。たとえ持っていたとしても、あなたはすべての商品のチェックをしますか」と疑問を投げかけるのは、ワシントンDCの消費者団体Center for Food SafetyのBill Freese氏だ。彼はArctic appleに"GMO"と明確に表示するよう要望している。

 遺伝子組み換え食品の開発者や米国で商品を売りたい企業にとって、消費者の反応が最大の関心事というわけではない。とりわけ大きな障壁となっているのが、米国の規制プロセスだ。連邦政府の規制はかなり複雑で、多くの開発企業にとって"不透明な経路"となっている。Arctic appleは、販売が認可されるまでに5年の評価期間を要した。しかし、アイダホのJ. R. Simplot of Boise社が開発した「変色しないジャガイモ」は2年間で認可された。

 同レポートによると、Okanagan社のNeal Carter氏は消費者のArctic appleに対する反応について楽観的に捉えており、「もはや、われわれをサタン呼ばわりするようなメールはほとんどない。どこに行けば買えるかと、問い合わせてくる」とコメントしている。

(あなたの健康百科編集部)