2017年12月18日 06:00 公開

慢性便秘症の正しい治療法は?

 日本初の『慢性便秘症診療ガイドライン』(以下、GL)が今年(2017年)10月、日本消化器病学会関連研究会の慢性便秘の診断・治療研究会により刊行された。便秘症は患者数が多い上、完治の難しい症例もあり軽視できない疾患だが、これまで明確な診断や治療の基準はなかった。高齢社会で患者が増加する中、待望のGLが完成。編集に加わった横浜市立大学大学院肝胆膵消化器病学教室主任教授の中島淳氏は「本GLが新たな慢性便秘症診療のスタート地点になる」と期待を示した。

高齢社会で患者増加、GL作成が急務に

 慢性便秘症は患者数が多く、2013年厚生労働省の国民生活基礎調査によると、男性の2.6%、女性の4.9%に便秘の自覚症状があった。一般的には深刻な病気と認識されていないが、専門医の対応を必要とする難治性の症例や閉塞性大腸炎による死亡例も存在する。高齢患者の割合が増加しており、特に、介護の現場では便秘やその合併症への対応が重大な問題となっている。今後、高齢社会の進展に伴い便秘症患者のさらなる増加が見込まれることなどから、GLの必要性が高まり、刊行に至ったという。

治療薬はルビプロストンや酸化マグネシウムを推奨

 GLでは、便秘を「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義。それによる症状が現れ、検査や治療を要する場合を「便秘症」としている。

 治療については、内服薬や生活習慣の改善、手術など計14項目に関して、それぞれ推奨度やエビデンス(科学的根拠)レベルが示された。

 強く推奨され、科学的根拠のレベルも高かったのは、内服薬である上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチド)と酸化マグネシウムなどの浸透圧性下剤の2種類だった。ただし、ルビプロストンについては、妊婦は服用を避けることと若年女性に生じやすい吐き気などの副作用に対する注意が記された。日本の便秘薬の9割以上を占めるのが、浸透圧性下剤の酸化マグネシウムだが、高齢者など腎機能が低下している患者が使用した場合、高マグネシウム血症を発症するリスクがある。さらに、活性型ビタミンDなどの吸収を邪魔する働きがあり、併用薬には注意が必要となる。GLでは、酸化マグネシウムの使用時には定期的なマグネシウム測定を推奨した。

センナやアロエは長期使用に注意

 一方、センナやアロエなどの刺激性下剤は、「頓用または短期間の投与を提案する」とされた。これらの刺激性下剤は薬局でも販売され、漫然と使われ続ける傾向にあるが、強力で依存性が高い。長期の使用は、大腸の粘膜が変色してその機能が落ちる大腸メラノーシスを引き起こすこともあるため、注意が必要という。

 日常生活にすぐに取り入れられる方法として、ヨーグルトに含まれるプロバイオティクスが「排便回数の増加に有効であり、治療法として用いることを提案する」とされた。生活習慣の改善は「適切な食事や運動、腹壁マッサージは慢性便秘症の症状改善に有効であり、行うことを提案する」となったが、科学的根拠のレベルは低いとのこと。

 中島氏は「便秘は生活の質を大きく落とす上、高齢者においては命に関わることもある。ささいな病気だと放置してはならない。こういった患者をどう診るかが、今の高齢社会で問われている」と述べ、今後もGLに改訂を加え充実させていくとした。

(あなたの健康百科編集部)