2017年12月22日 10:00 公開

【特別企画】近視矯正のための眼内レンズのお話

監修:北澤世志博 先生(医療法人社団稜歩会 神戸神奈川アイクリニック:東京都新宿区)
提供:スター・ジャパン合同会社

 最近、新しい屈折矯正手術として注目されている「眼内レンズによる視力矯正」。これまで多くの屈折矯正手術を行ってきた北澤世志博 先生(神戸神奈川アイクリニック チーフメディカルディレクター)に、その特徴や適した患者像を聞いた。

近視などの屈折異常を眼内レンズによって矯正する視力補正方法は有水晶体眼内レンズと言われるが、英語でのImplantable Contact LensのイニシャルからICLとか眼内コンタクトレンズとも呼ばれている。ここではICLの略称を用いて記述する(編集部)。

Q:まず、ICLとはどんなものか教えてください。

A:目の中にレンズを挿入して視力を矯正する手術です。Implantable Contact Lensの頭文字からICL(アイシーエル)とか眼内コンタクトレンズと呼ばれることもあります。みなさんご存じのレーシックと違って、ICLでは黒目(角膜)を削らないのでさまざまなメリットがあります。図1にレンズの形状や手術の概要を示します。麻酔は注射ではなく目薬で行いますので、痛みはありません。黒目の縁に3mm位の切開を作って、専用のインジェクターでレンズを折り畳んで目の中に入れ、虹彩(茶目)の後ろ側にレンズを設置して手術は終了です。切開が小さいため、縫合は不要です。手術時間は両眼で約20分間前後で、1時間程度の休息をとり、目を検査して帰宅する「日帰り」手術です。入院は不要です。

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Q:レーシックに比べてICLの主なメリットは何でしょうか?

A:まず、矯正精度が高いこと。角膜を削って目の屈折を変えるのではなく、レンズそのものを目の中へ入れるため精度が高いのです。またレーシックでは強度近視の場合、時に近視の戻りが生じ、再手術となることもありますが、ICLではほとんどないですね。それと視力の質が良いこと。ICLでは術後のハローやグレア※1、特に夜間での見えにくさが少ないのです。これらの点をICLのメリットとして説明しています。

※1ハロー、グレアとは:夜間や暗い中で光を見た時に、まぶしさを感じる現象。ICLではレーシックに比べてその程度や頻度は少なく、もしあっても通常は術後、徐々に気にならなくなる。この症状が残る場合は、主治医に相談すべきである。

Q:では、どんな患者さんがICLに適しているんですか?

A:レーシックと同じように、屈折矯正手術の適応であると判断された全ての患者さんが受けられます。スポーツや職業などの制限は原則ありません。

Q:眼科学会で定められたガイドラインで推奨される屈折度数があると聞きました。

A:ガイドラインでは、−6D※2超の強度近視例にICLが推奨されています。しかし、それほどの強度近視でなくても、ICLが適した患者さんは多くいます。例えば、不正乱視※3やドライアイのある方などが代表的です。このような患者さんは、レーシックでは合併症やドライアイの重篤化などが報告されていますので、たとえ−6D未満であってもICLの方が適応であると考えています。

※2 Diopter(D)とは:屈折を表す単位でディオプターという。近視の程度を分類する場合、矯正に必要なディオプターが−3Dまでを「軽度」、−3D超~−6Dを「中等度」、−6D超を「強度」と呼ぶ。

※3 不正乱視とは:角膜(黒目)の表面が、凸凹した状態(不正な形状)の乱視をいう。眼鏡では矯正が困難で、ハードコンタクトレンズが良い適応となる。レーシックでも矯正できない。

Q:ICLの場合、先生が最も注意を払っていることはどんな点ですか?

A:サイズの選択ですね。ICLは虹彩(茶目)の後面、つまり水晶体の前にレンズを置くのですが、レンズの支持部を毛様溝という部位に設置します。毛様溝の差し渡し寸法(直径)は個人ごとに異なっているので、レンズサイズの選択が最も重要だと考えています。もちろん仮にサイズが合わない場合や希望する度数に合致しなかった場合、ICLでは入れ替えができます。レンズを取り出して「元に戻せる」こともICLのメリットですね。

Q:ICLには、他にも医学的適応があるそうですね?

A:レーシックでは矯正が困難な円錐角膜疑いの患者さんでも、矯正視力が良く出ている方であれば、ICLは適応となります。ただ円錐角膜が進行すると、角膜乱視が増加して裸眼視力が低下する場合がありますので、専門医の先生とよく相談する必要があると思います。

Q:屈折矯正手術の将来について、ご意見を聞かせてください。

A:何年か前に、一部眼科医の不適切なレーシックにより、消費者庁から「安易に手術に臨まないよう」メッセージが出されました。それで、ここ数年、屈折矯正手術は以前の症例数を下回っていますが、そうした状況の中でもICLは増加しています。昨年、私が担当した患者さんで見ますとレーシックとICLの割合はおおむね半々で、ICLは1,000眼以上の手術を行いました。屈折矯正手術を希望する潜在的な患者さんは多いので、今後は、屈折矯正手術全体の症例数が復調し、レーシックとともにICLが中心となって手術件数は伸びていくものと推測しています。

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北澤世志博

北澤世志博 先生
(神戸神奈川アイクリニック)

  • 【略歴】
  • 1990年 福井医科大学(現 福井大学)医学部卒業
  • 1996年 日本眼科学会眼科専門医取得
  • 1996年 東京医科歯科大学医学部 眼科講師
  • 2004年 東京医科大学医学部 眼科客員講師兼任
  • 2010年 医療法人社団 稜歩会 チーフメディカルディレクターに就任