2017年12月27日 06:00 公開

一冊の漫画が難病研究の推進力に

『宇宙兄弟』生まれの基金を筋萎縮性側索硬化症の研究へ

 累計発行部数1,900万部超を記録する人気コミック『宇宙兄弟』に登場し、難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)の研究を行うキャラクター・伊東せりか(画像)。彼女の名を付けたALS研究基金、「せりか基金」の第1回授賞式が12月15日、東京都で行われた。式では、基金の助成金300万円が交付された東京大学大学院薬学系研究科細胞情報学教室・藤澤貴央氏と、250万円が交付された国立遺伝学研究所・浅川和秀氏(写真)が自身の研究について説明した。

"作品への共感"が活動の源

 はしか(麻疹)予防にマジンガーZ、目の病気の啓発に南方仁(医療漫画『JIN-仁-』の主人公)-。さまざまな病気の啓発活動にアニメや漫画を活用する取り組みは最近よく見られるが、「せりか基金」はそういった多くの例と異なり、作品のファンが積極的に関わっている点が特徴である。

 今回の助成金が、作中、ALSで父親を亡くし、その治療薬の開発を目指す宇宙飛行士・伊東せりかや作品自体を支持、応援する人らによる寄付やチャリティーグッズの購入によってまかなわれたこともその1例といえる。

 授賞式では、藤澤氏、浅川氏がALSの発症に関わる遺伝子や蛋白質の研究に取り組んでいることを報告。両氏とも『宇宙兄弟』のイラストやワンシーンなどをふんだんに使用して、式に出席したALS患者や作品のファンなどに自身の取り組みを紹介した。

 藤澤氏は、日本人でALSが発症する原因の1つとされるSOD1という遺伝子に注目し、この遺伝子が分解される仕組みを研究しているとした。

 一方、浅川氏はALSになると運動に関わる細胞にTDP-43という蛋白質が異常に集まることに着目。透明な体を持った熱帯魚ゼブラフィッシュを詳しく観察し、細胞とTDP-43との関係を調べているという。

 また、『宇宙兄弟』の作者・小山宙哉氏がビデオメッセージを寄せ、「作品では、ALSは治る病気だというつもりで描いている。現実のALSも治る病気になるよう願っている」とALS研究の進展に期待を寄せた。

 基金では、来年以降も助成金などでALS研究者を支援していく方針であるという。『宇宙兄弟』への共感を原動力に、ALSを"治る病気"にするための挑戦が続きそうだ。

(あなたの健康百科編集部)