2018年01月19日 06:00 公開

TV放映の「血圧サージ」に異議あり!

 健康診断で血圧は正常とされたのに、あるタイミングだけ高波のように血圧が急激に上昇(サージ)する人がいる。これを血圧サージとして紹介したNHKスペシャル『"血圧サージ"が危ない~命を縮める「血圧の高波」~』が、昨年(2017年)話題になった。しかし、高血圧専門医で臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)理事長の桑島巌氏は、健康な人の生理的な血圧の変動と、高齢者や動脈硬化が進行した患者の血圧の変動が混同されていると公式サイトで指摘した。

番組で若い男女80人の血圧を測定

 この番組では、脳の血管が破れて出血するタイプの脳卒中を起こし、その後回復した中年男性を紹介し、血圧サージが原因とした。また、若い男女80人に朝・昼・夕の1日3回、家庭血圧を測定してもらったところ、上の血圧(収縮期血圧)が1回でも135mmHgを超える血圧サージは31%(25人)に見られたという。

 この番組を見た患者から血圧サージに関する質問があったため、同氏はNHKのインターネットサービス(NHKオンデマンド)を見て確認。4点の誤解があるとしている。

 ① 健康な人の生理的血圧変動は血圧サージではない

 血圧は、健康な人でも緊張したときや怒りを感じたとき、会話中、運動直後、スポーツ観戦中などに上昇し、リラックスしているとき、運動後時間を置いた後や睡眠中などに低下する。このような血圧の変動は、活動する上で必要な生理的現象である。

 一方、血圧サージが問題になるのは、高齢者や動脈硬化が進んだ人で、血圧の急激な上昇は脳卒中や心臓病を起こす引き金の1つとなるからだ。

 番組では、この2つが混同されている、と桑島氏は言う。さらに、次の4点について指摘した。

 135mmHg1回超えても血圧サージ」に根拠無し!

 血圧が正常とされる人で、家庭で朝・昼・夜に測定した上の血圧が、1回でも135mmHgを超えたケースを「血圧サージあり」とするのは、明らかに誇大表現で、この程度の一時的な血圧上昇は生理的な変動の範囲内としている。

 桑島氏によると、そもそも血圧サージの値が135mmHg以上というのは、根拠のない数字であるという。

 ③ 血圧サージで脳卒中になったとは言えない

 番組に登場した中年男性は、血圧サージによって脳出血を発症したと紹介された。しかし、この男性は既に肥満がある上に、喫煙歴や24時間のうち夜間に高血圧が続いている他、睡眠時無呼吸症候群が疑われるなど、動脈硬化の危険因子をいくつも持っていた。そのことは、番組途中で医師に指摘されていた。

 桑島氏は「血管がかなり脆くなっていたことが、脳卒中の原因であろう。血圧サージのみで脳出血になったとは決して言えない」としている。

 ④ タオル握りは血圧サージに特に効くわけではない

 タオルを握る動作(ハンドグリップ)を繰り返すことで、安静時の血圧が若干下がる。これはウオーキングやスイミングなどと同じように、非薬物療法の一環として高血圧の予防や軽度の高血圧患者に勧められている方法だ。ただし「必ずしも血圧サージを特異的に抑える動作ではない」と、桑島氏は指摘した。

 診断と治療は医師の下で

 最近、健康に対する危機感を必要以上にあおるような健康情報が増えているようだ。本来の血圧サージを正しく理解すれば、不要な不安を減らし、対処すことができる。血管は臓器をつなぐ大切な体の一部。脳卒中や心臓病を起こさないためにも、医師の下で高血圧や血圧サージの診断を行い、適切な治療を受けてほしい。

(あなたの健康百科編集部)