2018年01月22日 06:00 公開

元に戻る認知症もあります!

〜肝性脳症を知っていますか?〜

 認知症というと、進行を食い止めることはできても、もう元には戻らないという印象が強いが、中には元に戻る(治る)認知症もある。うつ病による仮性認知症、薬物惹起性の認知症など、一時的に認知症であっても何らかの対応を行うことで認知症が治る、元に戻ることがあるのだ。中でもあまり知られていないのが、「肝性脳症」による認知機能の低下である。そこで、盛岡市立病院の加藤章信院長(岩手医科大学客員教授兼任)に肝性脳症の症状や治療、早期発見のポイントなどを聞いた。

血中のアンモニア値の上昇などが肝性脳症の主誘因

 肝性脳症とは、劇症肝炎や肝硬変などの重篤な肝障害が原因で生ずる、意識障害を中心とする精神神経症状のこと。肝臓の機能が低下して尿素を処理できなくなり、血液や髄液のアンモニア濃度が上昇し、脳にアンモニアが中毒物質として作用することが主な発症の原因と考えられている。

 初期症状は、倦怠感や睡眠障害、集中力低下、記憶障害、感情の変化(うつ状態、不安感、気分の変調)などで、周囲への気遣いがなくなり、だらしなくなるなどの人格・行動の変化ももたらす。文字を書く、計算をするといったことがしだいに困難になり、異常行動も多くなる。症状が進むと、興奮状態になり、暴れることもある。最終的には完全に意識を失い、昏睡状態になる。

肝性脳症の治療をすることで、認知機能が元に戻る

 こういった肝性脳症による認知機能の低下を含めた精神神経機能障害は、認知症の症状と類似しているところがある。加藤院長は「肝臓は沈黙の臓器として知られており、本人や家族が肝疾患に気づいていない可能性がある。肝性脳症であることを診断して治療することで、いわゆる認知機能障害が改善する可能性のあることを知ってほしい」と話す。

 肝硬変に対する高アンモニア血症の治療法としては、①誘因(蛋白過剰摂取・便通異常・利尿剤の過剰投与など)の除去、②栄養管理〔分岐鎖アミノ酸(BCAA)を多く含有する経腸栄養剤の補給〕、③薬物療法〔a)合成二糖類:ラクツロース・ラクチトール、b)難吸収性抗菌薬:リファキシミン、c)亜鉛製剤:酢酸亜鉛・ポラプレジンク、d)BCAA製剤、e)カルニチン製剤、など〕が挙げられる。

アルコールをたしなむ人、ウイルスを持っている人はアンモニア値を確認しよう

 潜在性や顕性の肝性脳症を早期に発見するための方法として、「前述のような性格や認知機能の低下の他に肝性脳症の初期で発現してくる羽ばたき振戦(手を前方に延ばしたときに鳥が羽ばたくように手が震える症状)の有無や血液アンモニア値を確認するのも有用」と加藤院長は言う。

 血液アンモニア値は、通常、60μg/dL以下が正常とされている。同院長は「健康人では、20μg/dL以下であることが多く、基準値の上限程度の値であれば、肝性脳症も鑑別診断として検討していただく意義がある」と指摘し、「特に、肝機能はほぼ正常ではあるものの、アルコールを常習的にたしなむ方やC型肝炎ウイルスのキャリアとしてフォローされている方では、慢性肝疾患の鑑別を兼ねて一度血液アンモニア値を確認されてみることも意味があるのではないでしょうか」と呼びかけた。

(あなたの健康百科編集部)