2018年01月26日 06:00 公開

肺がんの遺伝子解析は血液で検査できる時代に

 国立がん研究センターは1月19日、肺がん患者を対象に血液を用いた遺伝子解析を2017年12月より開始したと発表した。同センター東病院の全国肺がん遺伝子診断ネットワーク「LC-SCRUM-Japan」の最新の取り組みである。血液から肺がんの遺伝子変化を調べることができれば、従来の内視鏡や針を使った検査法に比べて、患者の負担は少なくなる。また医療従事者側にとっても、簡便で短時間に検査を行えることになり、繰り返し遺伝子の変化を把握できると期待されている。

ドライバー遺伝子が相次いで発見

 LC-SCRUM-Japanは、国立がん研究センターが全国の医療機関、製薬企業と協力して実施している遺伝子スクリーニング事業である。2013年に始まったLC-SCRUM-Japanでは、患者数の少なさゆえに治療薬の開発が難しい、希少肺がんを対象とした遺伝子スクリーニングを実施。患者の遺伝子変化に基づいた治療薬の開発や、大量の遺伝子情報解析を可能とする次世代シーケンサーを用いた診断薬の開発を目指している。

 こうした取り組みの背景には、肺がんの発生や進展に重要な役割を果たす「ドライバー遺伝子」といわれる遺伝子変異が近年、相次いで発見され、これらの遺伝子変異を標的とした分子標的治療薬が高い治療効果を示していることがある。例えば、非小細胞肺がん患者の約40%は、ドライバー遺伝子変異の1つである上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異が陽性で、こうした患者にはEGFRを標的とする分子標的治療薬が高い有効性を発揮することが明らかになっている。

 しかし、従来の肺がん患者における遺伝子解析は、内視鏡や針などを使って肺がんの腫瘍組織を採取するもので、"最もつらい検査の1つ"といわれるほど患者の負担が大きく、繰り返し行うことは困難であった。また、薬剤が効かなくなる耐性遺伝子の出現も明らかになってきたことから、遺伝子の変化を経時的に簡便に検出できる検査手法の開発が求められていた。

 このような中で、血液を用いた遺伝子解析は、簡便で繰り返し行える検査であるため、臨床導入が期待されている。

73種類の遺伝子の変化を血液から一度に測定

 今回、LC-SCRUM-Japanでは米国Guardant Health(ガーダントヘルス)社が開発した高感度な遺伝子解析技術Guardant360を用いて、肺がん患者の血液による遺伝子解析法の有用性を評価する研究を開始した。Guardant360は、血液から73種類の遺伝子の変化を一度に測定する。約2,000人の非小細胞肺がんの患者を対象として、腫瘍組織と血液の遺伝子解析結果を比較することで、この方法の信頼性を評価する。さらに、血液の遺伝子診断結果に基づいて、分子標的治療薬の治療効果を検討する臨床研究を新たに計画し、実施していく予定だという。

(あなたの健康百科編集部)