2018年02月08日 06:00 公開

タクシー運転手向けの糖尿病対策とは?

 2型糖尿病の危険因子として肥満や運動不足、不規則な生活習慣などが挙げられるが、職業柄、こうした因子に当てはまりやすいのが、昼夜交代のシフト制で勤務するタクシー運転手だ。1月23日、日本イーライリリーと日本交通は共催で、日本交通・赤羽営業所に所属するタクシー運転手約30人を対象にセミナーを開いた。ライフスタイルに合わせた糖尿病の予防と対策に関して、奈良県立医科大学糖尿病学講座教授の石井均氏らが講演を行った。

糖尿病薬は副作用にも注意を

 糖尿病は、空腹時(朝食前)血糖値が126mg/dL以上、随時(食事時間を考慮せずに決定した)血糖値が200mg/dL以上、また血糖の状態を知る上で重要な検査値の1つであるヘモグロビンA1c(HbA1c)が6.5%以上、これらのうち2つ以上が当てはまると診断される。ただ、この段階では症状が現れず、治療を継続する人は少ない。

 しかし、糖尿病を放置すると、細小血管症や動脈硬化性疾患といった合併症、さらには認知症、がんにもつながることから、「『ちょっと糖尿病』という状態はない。ずっと治療に通い続けてほしい」と同氏は話す。

 とはいえ、タクシー運転手は深夜勤務も多く、定期的に通院を続けることは難しい。また、処方された糖尿病薬の服用により、副作用で低血糖を来す可能性があり、タクシー運転手の場合は交通事故につながる危険をはらんでいるという。

「糖尿病は、『診断が付いて薬をもらったら、それで終わり』ではない。その薬にどのような効果があり、どのような副作用があるのか、必ず医師と相談してください」。同氏はこのように指摘し、糖尿病治療では医師と患者双方のコミュニケーションがとりわけ重要だと強調した。

日ごろの食生活について参加者に質問する石井氏

1年365日、食事内容を少しずつ変える

 続いて(株)エビータ代表で管理栄養士の浅野まみこ氏が、健康的な食事を選ぶための「食選力」(表1)をテーマに講演。タクシー運転手は外食中心の生活とならざるをえないことを念頭に、コンビニエンスストア、牛丼屋、ラーメン屋、うどん屋、ファミレスなどでの食事選びのこつを紹介した。

 同氏は外食で血糖値の上昇を抑えるポイントとして、①野菜を追加して先に食べる(ベジファースト)②単品よりも定食を選ぶ③調味料を追加しない-という3点を挙げる。例えば、うどん屋ではサラダうどんや山菜うどんを選ぶ、牛丼屋では牛皿定食にする、といった具合だ。コンビニでも単品ではなく、おにぎり、サラダ、インスタント味噌汁を購入し、「自分自身の定食」をつくることが重要だという。

「1日に3食を食べるとすると、1年365日で1,095回食べることになります。1,095回の食事内容を少しずつ変えれば、1年後にはものすごく変わっていることになります。一気に変えるのではなく、1年間続けることで体は変わりますので、ぜひ今日から実行してみてください」と同氏は呼びかけた。

表1. 浅野氏が勧める外食での「食選力」5カ条

(浅野まみこ氏提供)

筋力アップで糖を効果的に使う

 次にフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一氏が、タクシー運転手が短い休憩時間を利用して実践できる簡単なエクササイズを披露した。

「血糖値を効率的に下げるには上半身より下半身の運動が、筋力を向上させるには両足より負荷が大きい片足運動が効果的」と同氏。下半身運動を中心に、タクシー運転手が休憩時間の5分間に畳半畳分のスペースで実践できるプログラムを紹介した(表2)。さまざまなバリエーションの下半身運動を組み合わせ、かつリズミカルに行うことで、日常生活ではあまり使われない筋肉にも負荷がかかり、スクワットなどよりも筋力アップが望めるという。

表2.中野氏考案の糖尿病予防運動プログラム

(中野ジェームズ修一氏提供)

 同氏は「起床したら5分間運動する、帰宅したら5分間運動するなど、運動を日常生活のルーチンの中に取り入れてほしい。洗顔や歯磨きのように、生活習慣の一部に組み込むと、運動はより長続きする」とアドバイスした。

中野氏考案のトレーニングを実践する参加者

 会場では実際にトレーニングが行われた。わずか5分の運動だったが、参加者からは「思ったより大変だ」「疲れた」「足がつった」といった感想が聞かれた。しかし、疲れを口にしつつも笑顔で談笑する様子からは、今後の糖尿病予防に向けた意気込みがうかがえた。

(あなたの健康百科編集部)