2018年02月15日 06:00 公開

ジャズとクラシックで脳の活動に違い

ピアニストで比較

 音楽をつくる(奏でる)には、発達した脳構造が必要で、音楽家の脳は一般人とは異なるとされている。ドイツ・マックスプランク研究所・認知脳神経研究所のDaniela Sammler氏らは、脳波検査(EEG)によりジャズピアニストとクラシックピアニストの脳活動を比較した結果をNeuroimage2017; 169: 383-394)に発表。「演奏時の脳活動は、特徴的な脳波パターンを有しており、音楽のジャンルによって異なることが分かった」と述べている。

手の動きをリアルタイムで模倣

 音楽の練習によって、脳の感覚運動の柔軟性が誘導されることは知られている。しかし、音楽家がどのような練習を重ねたかによって、大きな違いが生じる。例えば、ジャズとクラシックのような異なるジャンルの音楽をどちらも演奏することは、10年以上の経験を持つプロの音楽家にとっても難しいという。

 世界的に有名なジャズピアニストのキース・ジャレット氏は、以前にインタビューで「ジャズとクラシックを両方演奏するコンサートに興味があるか」と尋ねられた際、「いいえ」と答え、「脳の回路により、実質的に不可能だ。演奏するときは両者それぞれに異なる回路を必要とする」と述べたという。

 Sammler氏らは、プロのピアニスト30人を対象にピアノ演奏と脳活動の関係を調査。30人のうち半数は2年以上ジャズに特化した練習を行っており、残りの半数はクラシックのレッスンを受けていた。全てのピアニストにピアノを演奏する手の映像(音なし)を見せ、リアルタイムで模倣してもらった。映像には予期せぬ和音や意外な演奏方法、ミスも含まれた。

 楽器の音に集中し、妨害音がない環境を確保するため、試験は無音の環境で、弱音付きのピアノを使って実施された。演奏中はEEGセンサーで脳波を記録した。

ジャズは和音、クラシックは演奏方法を重視

 その結果、ジャズピアニストではβ波(日常生活の脳活動と関連する脳波)の低下が見られ、演奏方法を犠牲にしても素早く和音を修正していた。クラシックピアニストでは、前頭部のθ波(瞑想、記憶や学習に関連する脳波)が強く観察された。不協和音には合わせられないこともあったが、β波の低下も見られ、演奏方法に対しては常に卓越した能力を発揮した。

 Sammler氏は「脳活動が異なる理由は、クラシック音楽に対する熟練した解釈とジャズにおける独創的な即興演奏という2つのスタイルが、音楽家に与える負担が異なることによる」と考えている。それによって、音楽家の脳では異なる処理が確立されており、ピアノ演奏中の両ジャンルの切り替えをより難しくしている可能性がある。

クラシックだけの研究では不十分

 ジャズピアニストとクラシックピアニストの大きな違いは、演奏時の動作とその方法である。ピアノ演奏では原則として、まずはこれから演奏すること(押すべき鍵盤など)を確認し、次にどのように演奏するか(運指など)を考える。

 クラシックピアニストは第2段階の"どのように"を重要視し、技術に個人の表現力を付加して完璧に演奏することを目指す。そのため、運指の選択が重要となる。これに対して、ジャズピアニストは"演奏すること"に集中し、常に即興演奏と予期しない和音の創作などに順応して演奏すべく準備をする。

 Sammler氏は「今回の試験では、同じ楽曲の演奏であってもジャズピアニストとクラシックピアニストでは脳の活動パターンが異なることが分かった。したがって、音楽を演奏するとき脳内で何が起こっているのかを知りたいのであれば、特定の音楽ジャンルを対象にするだけでは不十分であることも明らかになった」と述べている。

(あなたの健康百科編集部)