2018年03月07日 06:00 公開

仁志敏久氏、「指導者の目」で野球障害予防

病院主催の少年野球教室

仁志敏久氏(左)と慶友整形外科病院院長の伊藤恵康氏(右)

 スポーツ障害を広く扱う慶友整形外科病院(群馬県館林市)スポーツ医学センターが主催する少年野球教室が、同市で開催された。指導者は元プロ野球選手で現在は野球日本代表(侍ジャパン)U-12代表監督の仁志敏久氏と日本体育協会認定アスレティックトレーナーの川島浩史氏。野球教室終了後は、同院において指導者と保護者を対象とした「野球指導者座談会」が開かれた。仁志氏は「少年野球では、関節障害などが重症化する前に発見する"指導者の目"が重要だ」と指摘している。

指導者に気付いてほしいこと

 少年野球教室は、同センター長の古島弘三氏による挨拶で始まった。同氏はスポーツ医学専門医の立場から、県内の少年野球チームの指導者を対象とした指導を行っている。今回の野球教室も指導者に見てもらうために企画したものだという。同氏は「指導者の多くは、勝利を最優先して誤った方法を押し付けている。指導法の選択次第で子供たちの能力を伸ばしたり障害を減らすこともできる。今回の教室を通じて、指導者にそのことに気付いてほしい」と述べている。

開始の挨拶をする古島氏(中央)

 子供たちはまず、川島氏の指導による障害予防やパフォーマンスの向上につながる"コーディネーショントレーニング"を行い、その後、仁志氏による野球指導を受けた。仁志氏の指導は、"基本的な練習を飽きさせずにやらせる"、"子供に、これをやれ、あれをやれと押し付けない"がポイントだという。

コーディネーショントレーニングを行う子供たち

野球指導する仁志氏

選手を増やすと同時に良き指導者を増やす

 野球教室後の指導者座談会で、仁志氏は「近年、野球をやる子供が減っている。しかし、野球をやる子供を増やすと同時に良き指導者を増やすべき」と述べた。同氏によると、少年野球の本質は①野球を通した社会的教育(学校や家庭ではできない教育)②心身の健全化③自立の促進(自分の意見を主張できるようにする)−である。勝利至上主義で抜け落ちてしまいがちなこれらを忘れてはいけない。

野球指導者座談会

 野球に限らず、子供のスポーツ離れが進んでいるが、川島氏は「子供の体力も低下している」と述べる。「スポーツを続けていくためには、小さいころから神経系を鍛えることが重要だ。スポーツを身に付ける過程で、考えて分析することも子供に良い影響を与える」と説明した。また、子供が家でできるトレーニングとして「体幹を鍛えるのはもちろん、足指と足の裏の筋肉を鍛えることも重要」と述べ、例としてタオルギャザー(椅子に座った状態で床に広げたタオルを足の指でたぐり寄せる)を挙げた。

 保護者からの「体を大きくするための食事や栄養は?」との質問に対し、同氏は「栄養はプロテインではなく食事から取ること」と回答。トレーニング後のプロテイン摂取は否定しないが、プロテインを食事に置き換えるのはよくないという。また、古島氏は「成長期には睡眠が第一である。ハードなトレーニングによって、疲れ過ぎないことにも注意したい」と述べた。走り過ぎなどで体に過度の負担をかけると成長ホルモンの分泌が抑制され、身長が伸びなくなるという。

スポーツは体に負担がかるもの

 仁志氏によると、指導者にとっては、子供たちに無理をさせないための線引きが難しいという。野球では、外傷よりも練習のしすぎで肘や肩などの関節に障害が起こることが問題となる。同氏は「子供はまだ骨が十分に発達してはいないため、大人と同じトレーニングをしてはいけない。関節障害などは、深刻な状態になる前に大人が発見するべき。深刻な痛みでも"痛い"と言わない子供もいるため、指導者の判断が重要になる」と述べる。

 また、「競技スポーツは体に負担がかるものであり、特に野球は体の特定の部位に負荷がかかる。痛みや障害が出ないように指導者が医学的知識を持ち、正しい筋力バランスが身に付くよう子供を指導することも重要である」と指摘している。

 スポーツでは障害が起こりうるため、正しい医学的知識を取り入れた指導法や予防検診を受けられるという面から、指導者と地域の専門医との連携がきわめて重要になる。同氏は日本全国で少年野球教室や講演などを行っているが、医療との連携の面では地域格差が非常に大きいという。

 館林市には慶友整形外科病院のような専門病院があり、野球チームや指導者と医療機関との連携が取れているが、そのような地域はまだ少ない。同氏は「それでも、以前に比べれば野球障害を取り巻く環境は改善されている。子供には大人のサポートが必要で、障害が重症化する前に見つける"指導者の目"が重要である」と述べた。

(あなたの健康百科編集部)