2012年01月17日 公開

高脂肪食で太る理由解明か、脳にダメージで食欲を刺激

米研究

 ダイエットは長続きしない。特に太れば太るほど,わき上がる食欲に打ち勝つことは難しい。この原因のひとつに,肥満が直接脳に与える影響が取りざたされている。米ワシントン大学のJoshua P. Thaler氏らは,脂肪の割合が高い食事を与えられたマウスやラットでは,1~3日以内に脳の視床下部(食欲などをコントロールする部位)が炎症を起こし,それによる神経の損傷が認められたと、1月3日発行の米医学誌「Journal of Clinical Investigation」(2012; 122: 153-162)に発表した。この神経損傷が食欲を刺激し,さらに高脂肪食を求める悪循環を生み出すという。

食べて24時間以内に炎症反応

 Thaler氏らは,カロリーの60%が脂肪に由来する高脂肪食(通常食の約2倍)を,ラットとマウスに食べたいだけ食べさせた。すると、その視床下部では,食事開始後24時間以内にさまざまな炎症マーカー(炎症や組織障害によって変動する体内の物質)が増加し始め,1週間以内には炎症による神経の損傷も検出された。この炎症は1週間ほどで治まるが,その後も高脂肪食を与え続けると1カ月後には再発し,その後約8カ月の実験終了時でも治らなかったという。

 脳の視床下部は食欲やエネルギー代謝を制御しており,肥満になると炎症を起こし,食欲や体重のさらなる増加の原因となることは,ラットやマウスによる実験ですでに知られていた。しかし,高脂肪食を食べた後にこれほど早く炎症反応が起こることは,今回初めて分かったようだ。

 これにより,肥満による脳へのダメージは,高脂肪食の最初の1食ですでに始まり,それが食欲を刺激する呼び水となり,また大量の高脂肪食を食べてしまうという悪循環を生むと考えられる。つまり,高脂肪食は,食べ始めたら止まらないというわけだ。

人間の研究でも関連示される

 Thaler氏らは,人間でも同じことが起こるのかどうか34人の被験者を対象に調べたところ,肥満度が高い人ほど視床下部の炎症性神経損傷が認められたと報告している。一度太ってしまうとなかなかやせられないというのは,ヒトでも視床下部の炎症に原因があるのかもしれない。

 一方,ラットやマウスで観察された視床下部の即時型炎症反応は,人間でも確認されたわけではない。しかし、仮にあったとしてもそれは身体の正常な生理反応であり,それ自体をそれほど恐れる必要はないという研究者もいる。高脂肪食の取り過ぎにより,その炎症が習慣化すると良くないというわけだ。

 Thaler氏らは現在,高脂肪食を途中から通常食に替えたとき,視床下部での炎症および神経損傷が回復するかどうかを研究中だという。そう,もう手遅れなのかどうか,知りたいのはそこなのだ。

(サイエンスライター・神無 久)

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