2012年06月19日 公開

環境汚染物質濃度が高い母親の女児で肥満リスク上昇

デンマーク研究

 デンマーク国立血清学研究所のThorhallur I. Halldorsson氏らは、同国内の母子を対象とした研究から、妊娠中にペルフルオロオクタン酸(PFOA)の血中濃度が高い母親から出生した女児では、20年後の肥満リスクが上昇することが分かったと、米医学誌「Environmental Health Perspectives」(2012; 120: 668-673)に発表した。PFOAは繊維製品などに含まれる化合物で、環境汚染物質として注目されている。

肥満増加は食事と運動のみで説明不能

 PFOAは、ペルフルオロ化合物と呼ばれる環境汚染物質の一種。ペルフルオロ化合物は、織物、カーペット、消火器用泡消火薬剤などのさまざまな製品に含まれているだけでなく、含浸処理などの工業生産過程でも用いられている。ところが2000年以降、その一種であるペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)が、野生の動植物やヒトの体内に残存していることが世界中で報告されるようになり、環境汚染に関する懸念が一気に噴出した。

 ペルフルオロ化合物は母親の妊娠中に胎盤を通して母体から胎児に移行し、出生後は母乳から子供に移行する。ペルフルオロ化合物の多くは残留性が高く、生体に有害な影響を与える恐れがあるとされている。

 一方、過去数十年間に大人、子供を問わず世界中で肥満が急増しているが、こうした大規模な体重増加は、食事と運動(身体活動)のみでは説明できないと考えられている。

 Halldorsson氏らは、環境中の内分泌かく乱物質(環境ホルモン)の濃度上昇が、世界的な肥満の増加に影響している可能性があると考え、妊娠中の母親の血中PFOA濃度によって分類し、母親の体重や生活状況などのさまざまな要因を加味した上で解析を行った。

男児では関連認められず

 Halldorsson氏らは、1988~89年にデンマーク・オーフスで約1,000例の妊婦を登録し、妊娠30週時点で血液を採取、凍結保存した。2008~09年にその子供へBMI(肥満指数)や腹囲(ウエストサイズ)などを記録する追跡研究への参加を呼び掛け、母親の血液中のペルフルオロ化合物濃度との関連を調べた。

 解析の結果、妊娠中の血中PFOA濃度で4つに分けたうち、最も濃度が高いグループの母親から生まれた女児は、最も低いグループの母親から生まれた女児と比べ、20歳前後で過体重(小太り)になるリスクが3倍高かった。また女児では、母親のPFOA濃度が高いほど、肥満と関係するインスリンやレプチンの濃度も高まったという。

 一方、男児でも母親の血中PFOA濃度が高かった場合、インスリンとレプチンの濃度が上がったが、女児と比べて関係性は弱く、肥満リスクの増大は認められなかった。

 Halldorsson氏らは「今回の研究は、食事や身体活動に加えて環境汚染物質などの因子が、現在見られるような肥満のまん延に影響していることを示している。しかし、結論を出すには時期尚早で、同様の試験を再度実施して結果を追認する必要がある」と述べている。

 さらに「今回はデンマークでの研究だが、ノルウェーでもPFOAを含むペルフルオロ化合物の濃度が、1980年代後半にデンマークと同様に上昇していることが分かっている。そのため、今回の研究結果はノルウェーでも再現されるかもしれない。2000年頃からノルウェーの女性で血中の環境汚染物質の何種類かが減少しているものの、全ての環境汚染物質が減少しているわけではない」と付け加えている。

(編集部)

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