2012年10月05日 公開

乳がん検診に潜む落とし穴、乳がん発症リスク1.43倍

オランダ研究

 日本人女性の20人に1人が発症するといわれている乳がん。その早期発見に有効とされてきたマンモグラフィー(乳房レントゲン撮影)だが、オランダがん研究所のAnouk Pijpe氏らによって英医学誌「BMJ」に発表された論文(2012; 345: e5660)によると、乳がんの原因遺伝子として知られている変異型BRCA1/2を持つ30歳未満の女性は、マンモグラフィーなどの電離放射線検診によって、乳がんを発症するリスクが増加するという。ピンクリボン運動として慈善団体により盛んに推奨されてきた乳がん検診だが、その効果に関しては疑問の声も多かった。ここに来てその弊害まで明らかになってきたとなると、そろそろその安易な推奨は見直されるべき時が来ているのかもしれない。

検診受けた100人中14人が発症する可能性

 正常型BRCA1/2遺伝子は、がん抑制遺伝子であると同時にDNA修復酵素遺伝子でもあるため、そこに変異を持つ人は持たない人よりも電離放射線によるDNAのダメージを受けやすいことは予想されていた。そのため、変異を持つ人が電離放射線診断を受けた場合、がんを発症するリスクが上昇するのかどうかに関する研究はこれまでいくつか行われてきた。しかし、いずれも実験間の条件が異なっていたり、小規模なものだったりしたため、一貫性のある結果は得られなかった。

 そこで、Pijpe氏らは、欧州最大規模のコホート研究として計画されたGENE-RAD-RISKプロジェクトに2006年から2009年まで参加した、オランダ、フランス、イギリスの変異型BRCA1/2保有者1,993例(18~39歳)を対象に、電離放射線検診を受けたことと発症リスクに関係があるのかどうかを調べた。被験者らは、初めて電離放射線検診(マンモグラフィー、胸部レントゲン撮影、CT)を受けた年齢、20歳未満、20~29歳、30~39歳で受けた回数、最後に受けた年齢を報告した。

 その結果、30歳未満で一度でも何らかの電離放射線検診を受けた場合、発症リスクは1.9倍上昇したが、30~39歳で受けた場合は、リスクの上昇は認められなかった。マンモグラフィーに限って言えば、30歳未満で一度でも検診を受けると、発症リスクは1.43倍増加した。これは、BRCA1/2遺伝子変異を持つ30歳の100人に9人は40歳までに乳がんを発症するといわれている中で、30歳より前に一度でもマンモグラフィー検診を受けている100人だと14人が発症することになるほどの影響となる。

 Pijpe氏らは、今回の研究において30歳未満でマンモグラフィー検診を受けたことのある被験者の数が30人と少なく、またBRCA1遺伝子変異保持者に比べてBRCA2遺伝子変異保持者の数も少な過ぎたことから、さらなる研究の継続が必要だとしながらも、できれば核磁気共鳴画像法(MRI)などの電離放射線を使わない検診を勧めるとコメントしている。

(サイエンスライター・神無 久)

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