2013年11月14日 公開

【寄稿】糖尿病はこれからの季節が要注意! 血糖管理が悪化

北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟

〈編集部から〉

 体が縮こまる寒い季節、脳卒中や心筋梗塞も増えるといいます。こうした中で、冬になると糖尿病患者の血糖値の状態も悪くなるとの論文が、大分県日田市・岩尾病院の研究グループから発表されました。冬に血糖コントロール(管理)が悪化するのはなぜなのか。研究グループは「運動量の低下」と結論していますが、北里研究所病院糖尿病センターの山田悟センター長は、違う原因がある可能性も指摘しています。今回の研究結果について、同センター長に解説してもらいました。

研究の背景:本州からの報告では冬に血糖コントロールが悪化

 血糖コントロールに季節変動はあるのか? この問い掛けに対していくつかの研究があり、いずれも冬に血糖コントロールが悪化することが示されてきた(「Diabetes Care」2001; 24: 1503、「Diabetes care」2004; 7: 1238-1239、「Diabetes Research and Clinical Practice」2010; 88: 65-70、「Diabetes Research and Clinical Practice」2012; 96: e53-54)。しかし、これまでの報告は、福島県、島根県、東京都、三重県からのものであり、日本の南部からの報告はなかった。

 このたび、大分県日田市のグループから九州でも冬に血糖コントロールは悪化し、その理由が、食事の変化よりも運動量の低下に由来するという報告がなされたのでご紹介したい(「Diabetology International」2013; 4: 173-178)。

研究のポイント1:九州の一施設研究

 本研究は大分県日田市の岩尾病院からの報告であり、同院に通院中の糖尿病患者のヘモグロビン(Hb)A1c値を解析したものである。

 2010年12月の時点で3年以上継続して外来通院中の579人を対象とし、2009年1月~10年12月のHbA1c、体重の変動を見た。2カ月連続してHbA1cの測定がない患者を解析対象から除外し、最終的に207人が解析対象とされた。また、アンケートによって、食事療法と運動療法をきちんと行っているかも調べた。

研究のポイント2:血糖コントロール悪化は運動量低下のためと推測

 解析の結果、図1に示されるように、平均気温の変動と逆の動きでHbA1c、体重が変動し、HbA1cには図2に示されるように10月を最低値、3月を最高値とする季節変動があることが分かった。

 また、1~5月を冬・春、6~11月を夏・秋として(12月の扱いは不明)、HbA1c、体重、食事・運動療法をきちんと行っているか比べたところ、夏・秋の方がHbA1cが低く、体重も軽かった。食事療法をきちんと行っているかは季節による変化がなく、運動療法については夏・秋に「良い」と答える人が多かった()。このため研究グループは、季節によってHbA1cや体重が変化することは、運動量の変化に由来する部分が大きいのだろうと結論している。

私の考察:気温、食事、運動のいずれが原因か不明

 本研究は、これまでの研究結果の通り、日本人の血糖コントロールが冬に悪化するという現象を確認している。私は、こうした現象は雪国特有のことなのかと考えていた(大分県日田市は九州の中では雪の多い地域らしい)。しかし、東京からの報告もそうである以上、雪によって外出の機会が減ることが要因とは考えにくい。そうすると、研究グループの意見と反して私は運動以外の要素を原因として考えたくなる。

 日本人は正月に食事が乱れやすいのではないだろうか。本研究で行った食事・運動療法をきちんと行っているかどうかのアンケートは、定性的(状況を説明している)であって定量的(具体的な数字で示す)ではない。そもそも、食事療法をきちんと行っている割合は低いのだが、正月や歓送迎会シーズンは激しく食事が乱れている(もともと守れていないが、その時期にはすさまじくひどい食生活になる)という可能性が残されている。

 また、気温が低くなると冬眠動物でない人間でも何らかの因子が働いて、食欲が向上したり、身体活動(運動)が抑えられたりするのかもしれない。南スペインからは、季節によるHbA1cの変動を否定する論文が出されてはいるが(「Journal of Diabetes and its Complications」2013; 27: 618-620)、ぜひ、オーストラリアやニュージーランド、南アフリカからの報告を聞きたいものである(私が検索した限りではそうした論文はヒットしなかった)。

 ただ、悪化の真の原因がどのようなものであれ、目の前の患者に対して、これからの季節の血糖値、体重の悪化について十分な注意を促しておくべきことは間違いないであろう。

山田 悟(やまだ さとる)

 1994年、慶應義塾大学医学部を卒業し、同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て、2002年から北里研究所病院で勤務。現在、同院糖尿病センター長。診療に従事する傍ら、2型糖尿病についての臨床研究や1型糖尿病の動物実験を進める。日本糖尿病学会の糖尿病専門医および指導医。

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