2014年04月09日 公開

糖質制限ダイエット始めるなら65歳を過ぎてから?

タンパク質多い食事で中高年のがん死リスク上昇―米研究

原因は動物性タンパク質の取り過ぎか
原因は動物性タンパク質の取り過ぎか

 ダイエットから糖尿病の治療まで、その効果が注目されている糖質制限ダイエット。食事から取るカロリーのうち、糖質(炭水化物から食物繊維を除いたもの)の割合を減らす方法だが、極端に制限することでさまざまな"副作用"が指摘されている。こうした中、食事でのタンパク質の割合が多い人で死亡率が1.7倍、がんによる死亡率が4.3倍に上がるという研究結果が、米医学誌「Cell Metabolism」3月号(2014; 19: 407-417)に発表された。報告した米・南カリフォルニア大学老年医学大学院のMorgan E. Levine氏らによると、死亡率やがんリスクが上がるのは65歳までで、それ以降は逆に死亡率を下げるとしている。極端な糖質制限ダイエットを始めるなら、65歳を過ぎてからということか。

65歳超はがん死リスク6割減

 アトキンス・ダイエットを含め、糖質制限ダイエットでは食事に占める糖質の割合が減るため、自然とタンパク質を取る量が増える。確かにダイエット効果はあるのかもしれないが、このように摂取カロリーの大部分をタンパク質に依存する極端な食事法が、長い目で見て健康的といえるのだろうか。残念ながら、この疑問に答えられるような研究はこれまでなく、日本糖尿病学会も極端な糖質制限食を推奨しない方針を打ち出している(関連記事:極端な糖質制限食「勧められない」―日本糖尿病学会)。

 そこでLevine氏らは、1988~1994年に行われた全米健康栄養調査(NHANESⅢ)の参加者のうち、50歳以上で平均年齢65歳の男女6,381人を対象に、食生活でのタンパク質摂取量と寿命および死因との関連性について、2006年までの18年間にわたり追跡調査を行った

 その結果、50~65歳では、タンパク質の割合が高いグループ(総カロリーの20%以上がタンパク質由来)で、タンパク質の割合が低いグループ(総カロリーの10%未満がタンパク質由来)と比べて死亡率が1.7倍上昇し、がんによる死亡に限定すると4.3倍に上った。タンパク質の割合が中間のグループ(総カロリーの10~19%がタンパク質由来)でさえ、がんによる死亡率が3倍以上に上がっていた。

 この関係は、総摂取カロリーに占める脂質や炭水化物、植物性タンパク質の割合によっては影響を受けなかったことから、動物性タンパク質の取り過ぎが原因と示唆された。

 一方、65歳を超えた人では、高タンパク質グループで糖尿病による死亡率を10倍以上高まっていたものの、死亡率は3割減、がんによる死亡率は6割減だった。中タンパク質グループでも死亡率2割減少していたという

原因はIGF-1

 では、なぜ65歳以下では寿命を縮める原因となった高タンパク質食が、65歳を超えると逆に長生きの要因となったのか。

 Levine氏らは、過去の研究結果も考慮した結果、その鍵を握るのがインスリン様増殖因子1(IGF-1)にあると考えた。というのも、血液中のIGF-1濃度はタンパク質を取る量が多いほど増加し、それが高いとがんになりやすくなること、さらに65歳以降はIGF-1濃度が下がることが分かっていたからだ。

 そこで、今回の参加者2,253人分のIGF-1濃度を元に解析した結果、IGF-1濃度はタンパク質を取るほど上昇し、IGF-1濃度が血液1ミリリットル当たり10ナノグラム増えるごとに、50~65歳の高タンパク質グループでは低タンパク質グループよりがんによる死亡率が9%上昇することが分かった。

 さらにLevine氏らは、がん細胞を移植したマウスを使い、高タンパク質食→IGF-1濃度上昇→がん進行という因果関係の証明を試みた。すると、高タンパク質グループでは低タンパク質グループと比べ、平均血中IGF-1濃度が高く、移植されたがんの進行が早く、がんの平均サイズが大きかった。一方、遺伝的にIGF-1を産生できないマウスでは、がんの進行が著しく抑えられた。

喫煙と同等の発がんリスク

 以上の結果をまとめると、今回の研究によって初めて、年齢に応じた最適なタンパク質の摂取量があること、65歳以下でのタンパク質中心の食事は喫煙と同程度の発ガンリスクを伴うが、65歳を過ぎれば逆に死亡率を下げる健康に良い効果があることが明らかになったといえるだろう。

 すなわち、中高年では低タンパク質食を、高齢になってから中~高タンパク質食へ移行するというのが、長生きの秘訣(ひけつ)というわけだ。

(サイエンスライター・神無 久)

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