2014年05月07日 公開

生レバーに寄生する「肝蛭」、市場に出ている可能性も

牛、豚、羊などから感染

牛の肝臓に寄生する肝蛭の成虫<br />
(松尾加代子氏提供)
牛の肝臓に寄生する肝蛭の成虫
(松尾加代子氏提供)

 2012年に提供が禁止された牛レバーの生食(レバ刺し)だが、消費者からの人気は根強く、罰則(2年以下の懲役か200万円以下の罰金)が定められているにもかかわらず、隠れて提供している店もあるようだ。こうした牛レバーの生食によって起こる病気として、肝蛭(かんてつ)症がある。岐阜県食肉衛生検査所の松尾加代子氏は、日本寄生虫学会の会合で、原因となる寄生虫の肝蛭に感染したばかりの牛が検査などで見落とされ、市場に出回っている恐れがあるとして注意が必要と呼びかけた。なお、肝蛭は牛だけでなく、豚や羊などのレバーにも寄生する。

感染すると肝臓の痛みや黄疸など

 肝蛭は体長5ミリほどの寄生虫で、成虫は体長2~3センチ、幅1センチほどになる(写真)。中間宿主(幼虫が発育する場所)は水田や小川などにすむ巻き貝のヒメモノアラガイ、終宿主(成虫が繁殖する場所)は人、牛、豚、羊など。成長すると水辺の植物にくっつくため、これらをよく洗わないで食べても感染する。

 肝蛭に感染すると、肝臓の痛みや腫れ、機能異常、発熱、黄疸(おうだん)、嘔吐(おうと)、じんましん、発熱、下痢、貧血などの症状が現れる。糞便(ふんべん)や胆汁などの検査で卵が出てくれば診断がつき、治療は抗線虫薬のプラジカンテル(商品名ビルトリシド)などを服用する。

 全国の屠(と)畜場で肝蛭が発見される割合は減っており、近年は1%程度。しかし、人への感染報告は年に数例あるという。そこで松尾氏は、同検査所管内で肝蛭に感染した牛の実態を調査した。

農家の高齢化で対策に遅れも

 岐阜県内で処理される牛の過半数は愛知県産だが、2009~11年度に肝蛭感染で肝臓を廃棄した54頭のうち、半数は岐阜県内の特定の農家から出荷されていることが判明した。そのため松尾氏は、岐阜県中央家畜保健衛生所などと連携し、2011年に農家を視察、翌年にヒメモノアラガイを含む巻き貝の調査を行った。

 その結果、肝蛭に感染した牛を多く出荷していた農家では、牛の飲み水用の水槽からあふれた水が地面にたまったまま放置されており、巻き貝の繁殖には絶好の環境だった。さらに、牛舎周辺の水草が全てウシの首が届く範囲で食べられていたため、そこから感染した可能性が高いという。

 松尾氏は、こうした農家個々の衛生対策について「高齢化や後継者不足を理由に有効な対策を講じられずにいる農家が少なくないため、指導の徹底が難しい」と述べている。

レバ刺し提供業者指導に協力を

 牛舎周辺の巻き貝の調査では、春先はヒメモノアラガイがほぼ100%を占めていたが、8月を境にサカマキガイが逆転するようになった。8月に採取したヒメモノアラガイ79匹のうち、11%から肝蛭の幼虫であるセルカリア(体長200マイクロメートル)やレジア(同500マイクロメートル)が検出された。

 以上から、松尾氏は「屠畜検査は肉眼で行われるので、肝蛭が幼虫の段階にある感染初期の牛は見逃されている可能性が高い」と指摘した。

 禁止されているにもかかわらず、愛好家の根強い要望に応じて牛レバ刺しの提供を続けている飲食店もある。このため、松尾氏は「細菌性の食中毒だけでなく、寄生虫感染の危険性を消費者に周知し、提供業者がいれば指導に協力してほしい」と呼びかけた。

(編集部)

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