2014年06月12日 公開

脳卒中後遺症に新療法、電流刺激とリハビリで残る能力引き出す

8割で腕や手指の麻痺改善

ニューロプログラムとTMS治療の説明<br />
(東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座公式サイトより)
ニューロプログラムとTMS治療の説明
(東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座公式サイトより)

 脳卒中を起こすと、麻痺(まひ)などの後遺症が残り、日常生活が大きく妨げられる。最近、脳に電流を流して脳活動のバランスを整え、リハビリを併用することで脳に残っている能力を引き出す新しい治療法が注目されている。東京慈恵会医科大学付属病院でこの治療法「NEURO(ニューロ)プログラム」に取り組む、リハビリテーション科の安保雅博診療部長に聞いた。8割の患者で腕や手指の麻痺が改善したという。

残る能力引き出す

 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳卒中で傷ついた脳では、傷ついた部分を補おうと、健康な部分が過剰に努力するようになる。その結果、傷ついた部分はますます活動しなくなるという悪循環が生じてしまう。

 この脳活動のアンバランスを正す、経頭蓋磁気刺激(TMS)を使った治療法がある。TMSは専用のコイルに強力な電流を流すことで磁場を発生させ、頭蓋骨越しに脳内を電流で刺激して脳の活動量を調整する。

 安保診療部長らが2008年に開発したニューロプログラムは、TMSを使った治療法の一つ。TMSとリハビリを集中的に行う方法で、特に腕や手指の麻痺に効果的だ。安保診療部長によると、TMSは脳の状態を整えるが、それだけでは機能は回復しない。

 「ニューロプログラムでは2週間入院して毎日TMSを行い、改善具合を確認しながら、患者さんごとに個別のメニューでリハビリを行います。それによって初めて、脳に残っている能力を引き出せます」

悪質な施設にご用心

 ニューロプログラムは現在、同科が提携している全国9カ所の病院で行われている。これまでに受けた患者は1,800人以上おり、80%以上の患者で腕や手指の機能が改善している。副作用はなく、うまく物を飲み込めない嚥下(えんげ)障害や失語症などの後遺症にも効果が期待できるという。

 ただし、限界もある。重度の脳卒中で、指を動かす能力が完全に失われている人には効果がない。

 安保診療部長は、早くても発症3~4カ月後、歩行や排泄(せつ)のリハビリを一通り行ってからのニューロプログラム受診を勧める。「重度の人でも、焦らずに正しい指導の下でリハビリを続ければ、ニューロプログラムができるまで改善することもあります。中にはリハビリをせずにTMSを打ちっ放しにしたり、高額の治療費を請求したりする施設もあるので、病院選びには気を付けて」と助言している。

(編集部)

2013年6月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)

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