2014年06月17日 公開

増えるパソコン作業による筋肉・関節の障害、予防策さまざま

“能動的休憩”やアームレストなど

 パソコンなどの画面を注視する作業は、デスクワークで不可欠なだけでなく、プライベートでも多くの時間を割いている人も多いだろう。こうした画面の注視はVDT(visual display terminal)作業とも呼ばれているが、この作業によって筋肉や関節、骨に関する障害が増加しているという。広島文教女子大学大学院福祉工学の宇土博教授は、5月21~24日に開かれた日本産業衛生学会の会合で、VDT作業による障害について講演。予防策として、体を動かす"能動的休憩"や、腕の負担を軽減するマウス・キーボードのアームレストを使うことなどを紹介した。

アームレストで頸肩腕障害を予防

 VDT作業は、腰痛や首・肩・腕に痛みなどの異常を感じる頸肩腕(けいけんわん)障害を招くといわれている。宇土教授は、その原因として(1)座り続ける(姿勢の負担)、(2)体の大部分はほとんど動かさずに指のみが高度な反復運動を行う作業(手指の負担)、(3)絶え間なく注意を必要とする精神的負担、(4)スクリーン上に表示される質の悪い文字を見ることによる視覚的な負担―などを挙げた。

 片腕の重さは体重の5~8%で、キーボード入力やマウス操作などで腕を宙に浮かしながら作業をした場合、腕の重さを支える肩の筋肉に大きな負担がかかる。これがVDT作業による頸肩腕障害の大きな原因で、宇土教授は予防のためには腕の重さを支えるアームレストが重要としている。

 アームレストは、キーボードやマウスの操作時に腕を幅広く支え、肩甲骨を中心とした肩甲帯や手首の負担を軽くし、前かがみ姿勢を避けることによって腰痛も予防できるという。

傾動クッションで腰痛が半減

 宇土教授は、座り続ける姿勢に理想的なものはなく、最適に設計されたイスでも一日中同じ姿勢で座れば、腰や背中の痛みが起こるとしている。同じ姿勢を長時間続けると、筋肉の障害による腰痛だけでなく、椎間板ヘルニアを発症することもある。

 これを解消するツールとして、モーターで座っている面がゆっくりと前後に傾く座面傾動椅子が挙げられるが、価格の面で負担が大きい(コクヨの「ドクターチェア」=写真=で約30万円)。そこで宇土教授が注目しているのが、傾動クッションだ。3層構造と硬質ボードによって体の動きが促進されるという。

 宇土教授の実験では、傾動クッションを使って2時間のVDT作業をしたグループで目の疲労、首・肩・背中、お尻、脚の痛み、眠気が少なくなり、特に腰痛は半減した。さらに、文字の誤入力も減ったとされている。

 アームレストや傾動クッションなどが使えない場合、長くても1時間に1回は休憩し、作業中に使っていない筋肉を意識して動かすことが重要という。宇土教授はこの"能動的休憩"を「VDT作業による障害の基本的な対策」としており、「VDT作業で使用している筋肉を休め、作業中に使っていない筋肉を動かすことが重要。できるだけ大きな筋肉を動かすことが望ましく、歩くことが一番適している」と述べた。

鍼治療と新経絡療法

 こうした予防策も、症状が慢性化してからでは効き目が薄い。こうした場合、治療法の一つとして挙げられるのが鍼(はり)治療だ。宇土教授は、鍼治療は腰痛などに対する有効性が科学的に証明されていると説明。さらに、いわゆるツボを鍼でなく棒で押す「新経絡療法」も勧めた。

 新経絡療法の特徴について、宇土教授は(1)設備が不要で安全、容易、有効な医療技術、(2)作業に関連する筋肉・骨などの障害に従来の治療法より効き目が高い可能性がある、(3)産業医、保健師でも習得できて簡単に行える―と説明。また、痛みだけでなく、不眠や目まい、パニック障害など中枢神経系の病気が治ったとの報告もあるという。

 宇土教授は「新経絡療法は低コスト、低副作用で鎮痛効果が高く、産業保健への導入が望まれる」と述べた。

(編集部)

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