2015年03月26日 公開

全然取れない関節の痛み...人工関節も選択肢に

神戸大リウマチ教室

 膝や股関節などが痛む変形性関節症で、筋力訓練や減量、痛み止め薬やヒアルロン酸注射といった保存療法を続けても、痛みが取れず関節を動かすのがつらい...。そんな人は手術療法「人工関節置換術」が選択肢となる。3月19日に神戸大学整形外科で開催されたリウマチ患者教室では、人工関節の実物を展示しながら、どんな人が人工関節置換術に適しているのか、手術を受けるタイミングなどについて同科の三浦靖史准教授が解説した。

寝たきりになってからでは遅い

 人工関節置換術は、関節の痛んでいる部分を取り除き人工の関節に置き換える手術で、関節の機能を回復させるための手術として広く行われている。関節の痛みの原因を全て取り除くので、他の治療法よりも痛みを取る効果が大きい。

 定期的に診察を受けて治療しているものの「痛みがひどく、日常生活が制限される」「関節が固く、動かせる範囲が狭い」「安静にしたり痛み止めを服用していても痛みが改善しない」などの場合、人工関節置換術が選択肢となる。

 では、どのようなタイミングで手術を受けるべきだろうか。三浦准教授によると、どのくらいのペースで関節の状態が悪くなっているのかを、定期的な診察とX(エックス)線撮影で確認しながら、手術に最適な時期を検討することになるという。「人工関節置換術の目的は、日常生活を可能な限り支障なく送れるようにすることなので、関節を動かせなくなって骨や筋肉が減り、寝たきりになってしまってからでは遅いのです」(三浦准教授)。

人工関節の寿命は約20年

 人工関節置換術が行われる関節のほとんどは、歩行などで体重がかかる膝関節と股関節だ。人工関節は1970年代頃に開発され、現在では材料や機能が向上している。コバルトクロム合金やチタン合金などの金属とプラスチックで作られているものが多いが、金属アレルギーのある人はセラミック素材のものも選べる。一般に、耐用年数は約20年といわれている。

 人工膝関節置換術が適している人は、症状が進行して関節の表面が陥没するなど変形が強い人、比較的高齢で活動レベルがあまり高くない(動き過ぎない)人、膝関節の伸びが悪い人、「痛みなく歩けるようになって旅行がしたい」など術後に社会復帰したいと強く願っている人だという。

「部分」か「全」かは主治医と相談を

 人工膝関節置換術には、O(オー)脚がひどいため膝関節の内側だけがすり減って痛む場合に片方だけを人工関節に置き換える「部分置換術」と、痛んだ膝関節全体を人工関節に置き換える「全置換術」がある。部分置換術は、全置換術より小さい手術で済むが、O脚を矯正することはできない。また、術後もし外側の膝関節が痛み出したら全置換術を受け直さなければならない。部分置換術と全置換術のどちらが自分に合っているのかを、主治医とよく相談して選ぶことが大切だ。なお、関節リウマチのように、関節全体が炎症で痛んでいる場合には、基本的に全置換術が適している。

人工膝関節

人工膝関節モデル

傷跡は8センチ程度;術後の早期回復も可能に

 人工股関節は、大腿(だいたい)骨に埋め込む金属製のステム、金属製の骨頭(こっとう)、骨盤にはめ込む金属製のカップ、骨頭とカップの間に入るプラスチック性のインサートで構成されている。ステムとカップは、自然に骨が進入して3~6カ月で安定する。骨セメントと呼ばれる接着剤で骨に固定することもある。

人工股関節

人工股関節モデル

気になるのは、手術後の傷跡(手術創)だろう。人工股関節置換術では、8センチ程度しか切開しない最小侵襲手術が可能になっている。皮膚や皮下組織の傷が小さく出血量が少ないので、早期の回復が期待できるようになってきた。

 ただし、手術創が小さいことが最優先にはならない。手術創が小さくてもそれが手術する医師にとって慣れた方法でないなら、予後不良(治療後の見通しが悪いこと)に結びつく恐れもあるからだ。また、術後の痛みも気になるが、現在では硬膜外麻酔など、痛みを和らげる治療が進歩している。痛みを和らげて術後早期からリハビリを始めることにより、早期退院が図られるようになってきている。

 手術で痛みがなくなった後、気を付けることは何だろうか。「マラソンのような関節に強く負荷がかかる激しいスポーツは避けるべきですが、ゴルフなどの軽いものは全く問題ありません」と三浦准教授はアドバイスした。

(長谷川 愛子)

神戸大学整形外科リウマチ教室
 神戸大学整形外科では、関節リウマチ患者が自分の病気についての理解を深め、より良い療養生活を営めるアドバイスを伝える目的で、2003年から毎月1回、同大学病院で患者教室を開講している。同院に通う人だけでなく、他の医療機関や診療科で治療を受けている関節リウマチ患者、患者の家族、医療関係者など、関節リウマチに関心を寄せる全ての人に門戸を広げている。

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