2015年04月02日 公開

日本人に多い! 理性ではやめられないギャンブル障害とは

 ギャンブルが原因で家庭崩壊や借金、時には犯罪や自殺といった深刻な問題に発展してしまう―こうした状態を「ギャンブル障害」という。ある調査では、日本は欧米諸国に比べてギャンブル障害の人が多いとの結果が出ている。これまでは理性の問題とされてきたが、近年は病気として捉えられることもあり、専門外来を設置する医療機関もある。その一つである北里大学東病院(神奈川県相模原市)の宮岡等副院長(北里大学精神科学主任教授)は「一人だけで、あるいは身内だけで抱え込まないでほしい。病気と決めつけて受診するのではなく、とりあえず相談してみるくらいの気持ちで、まずは専門外来に来てください」と呼びかけている。

"ギャンブル"ではないパチンコが大半

 "ギャンブル依存症"とも呼ばれるギャンブル障害は、「特定の物質や行動、関係性に心を奪われ、自身を制御できなくなる状態」を指す嗜癖(しへき)障害の一つ。アルコールやたばこ、睡眠薬などの依存症(物質嗜癖障害)が知られるが、その対象がギャンブルになったものを指す(行動=プロセス=嗜癖障害)。

 ある調査によると、米国やカナダ、英国、スペイン、スイス、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、ニュージーランドでギャンブル障害を抱えている人の割合は人口の0.3~1.7%なのに対し、日本は男性で9.6%、女性で1.6%と高い。これには、日本で"ギャンブル"とは見なされないパチンコ・パチスロの存在が大きいといわれる。

 宮岡副院長は「カジノ法案が成立すると、ギャンブル障害患者が増えるのではないかと懸念する声もあります。しかし、現在、われわれが診療するギャンブル障害患者のほとんどはパチンコ・パチスロによるものです」と話す。

 パチンコ・パチスロ店の数は年々減少傾向にあるものの、店舗によっては広い駐車場や託児所を併設するなどアクセスが良く、利用しやすいように配慮されている。これがかえってギャンブル障害を助長している可能性もあるという。

体の症状なく周囲からの援助が難しい

 そもそも、なぜ、人はギャンブルにハマるのか―。まず、ストレス緩和(気分転換)を求める、いわば"自己治療"の一環として。次いで、一人になれる上、孤独を感じずに安堵(あんど)できる"居場所"を求めて。そして、金銭を賭けることへの"緊張"と遂行したときの"安堵"を得るために―というのが専門家の見解だ。

 このようなきっかけでギャンブルを続けるうちに、常にギャンブルへの強い欲求を抱くようになり、次第に賭ける金額や費やす時間が増えていったり、一度やめても何かのきっかけでまたのめり込んでしまったりする。同じ依存症(嗜癖障害)でも、アルコールなどのように体の症状が出ないため、本人の自覚が乏しく、周囲が問題視して援助するということも難しい。

 いつしか仕事や学業に支障を来したり、家庭内不和や暴力による家庭崩壊につながったり、返す当てのない借金を繰り返したり、そのために横領や窃盗、詐欺、殺人といった犯罪に手を染めたり、自殺してしまったりと、悲しい結末を招いてしまうこともある。

薬を使わず認知行動療法で治療

 現在のところ、依存症(嗜癖障害)全般については、専門医の間でもその定義に対して意見が一致しておらず、科学的根拠に基づく治療法は確立されていない。ギャンブル障害についても、薬だけによる治療は行われていないという。北里大学東病院のギャンブル障害専門外来でも、うつ病や不安障害などの治療で広く導入されている認知行動療法を取り入れている。

 例えば、ストレスを感じると悲観的に考えがちになり、問題を解決できない心の状態になってしまう。認知行動療法は、患者に自分を客観的に捉えるよう促し、ストレスにうまく対処できるよう、心の状態を安定させる治療法。同外来では、ギャンブル障害が理性の問題ではないことを患者本人に理解させ、ギャンブルに至る心の状態を改善させる目的でこの治療を行っている。

 ただ、患者はギャンブルの問題だけを抱えているとは限らない。双極性障害(そううつ病)や統合失調症など、他の精神疾患が背景にあったり、パーソナリティー障害や発達障害、認知症といった病気が潜んでいたりするケースもある。そうした場合には、それぞれの症状に合わせて薬による治療が行われることもあるという。

自己チェックリストで相談や受診の目安に

 同院では、相模原市の精神保健福祉センターと協力し、ギャンブル障害の啓発と治療に関する情報提供を兼ねた市民向け講演会を実施している。

 宮岡副院長は、患者団体などの自助グループや行政の相談窓口といった各支援施設を利用することを勧める一方、医療機関の活用については、「本人を説得して受診させることができなければ、家族などだけでも相談に応じています」と話す。「一人だけで、あるいは身内だけで抱え込まないでほしい。病気と考えるかどうかは専門家でも意見が分かれるのだから、相談するくらいの気持ちでまずは専門外来に来てください」と呼びかけている。

 なお、米国で作成されたギャンブル障害の自己チェックリストも、診断を確定するものではないが、相談や受診の目安の一つして活用されている(同院の公式サイトにも掲載)。

Q1 ギャンブルで負けたとき、負けた分を取り返そうとして別の日にまたギャンブルをしたか。



Q2 ギャンブルで負けたときも、勝っていると嘘をついたことがあるか。



Q3 ギャンブルのために何か問題が生じたことがあるか。



Q4 自分がしようと思った以上にギャンブルにはまったことがあるか。
Q5 ギャンブルのために人から非難を受けたことがあるか。
Q6 自分のギャンブル癖やその結果生じた事柄に対して、悪いなと感じたことがあるか。
Q7 ギャンブルをやめようと思っても、不可能だと感じたことがあるか。
Q8 ギャンブルの証拠となる券などを、家族の目に触れぬように隠したことがあるか。
Q9 ギャンブルに使う金に関して、家族と口論になったことがあるか。
Q10 借りた金をギャンブルに使ってしまい、返せなくなったことがあるか。
Q11 ギャンブルのために、仕事や学業をさぼったことがあるか。
Q12 ギャンブルに使う金はどのようにして作ったか。またどのようにして借金したか。









(松浦 庸夫)

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