2015年04月15日 公開

線維筋痛症の客観的な診断に一歩、第一人者も期待

北大が開発

 全身の痛みや疲労感が続く線維筋痛症は患者数200万人以上とされる難病だが、客観的な診断方法がなく、医師の中でも認知度が高くないことなどから、関節リウマチや精神疾患など他の病気と誤診されることが少なくない。こうした中、北海道大学大学院医学研究科の若尾宏准教授(社会医学)らは、血液検査で線維筋痛症を見分ける方法を開発し、4月8日発行の米科学誌「Plos One」(電子版)に発表した。線維筋痛症を客観的に診断できる可能性があり、この病気についての第一人者である東京医科大学八王子医療センターの岡寛教授も、小社の取材に「MAIT(マイト)細胞という新しい切り口で鑑別評価を行っている点が興味深い」とコメント。今後の発展に期待を寄せている。

100人の血液を分析

 線維筋痛症は、体の痛みとだるさが続く原因不明の病気で、30~60歳代の女性に多い。痛みの程度はさまざまで、うつ症状や不安などの精神症状を訴える患者もいるという(関連記事:「線維筋痛症」慢性的な痛みと強い疲労感、200万人が悩む)。診断は現在、(1)体の広範囲にわたる痛みが3カ月以上続いている、(2)全身18カ所の痛みを強く感じる部位(圧痛点)を4キロの力で押して11カ所以上に痛みがある―を満たすこととされている(セルフチェックはこちら)。

 この診断法の問題点は、患者の主観に頼ることだ。痛みの度合いを数値化して示すペインビジョンという機器で診断する医療機関もあるが、専門家の間でも、客観的に診断できる方法が求められていた。

 若尾准教授らは今回、線維筋痛症患者26人、関節リウマチ患者21人、脊椎関節炎患者37人、健康な16人の計100人を対象に採血し、血液の中にある成分の違いについて調べた。

線維筋痛症患者で特徴的な細胞・抗原を発見

 若尾准教授らが注目したのは、血液の中にあるTリンパ球の一種「MAIT(マイト)細胞」。大きく分けて3種類あるのだが、線維筋痛症患者では、特定の種類のMAIT細胞(CD4陽性MAIT細胞)が健康な人に比べて少ないことが分かった。一方、関節リウマチ患者や脊椎関節炎患者でも少なかったものの、線維筋痛症患者ほど顕著ではなかったという。MAIT細胞が多いほど痛みが弱く、MAIT細胞が少ないほど痛みが強いことも分かった。

 さらに、MAIT細胞の表面に発生している60種類の抗原(アレルギーなど体の反応を起こす異物)のうち、健康な人と比べて線維筋痛症患者で発生量が変化している11種類、関節リウマチ患者や脊椎関節炎患者と見分けることができる10種類を特定。また、線維筋痛症の治療薬を一時中止すると、12種類の抗原の発生量が変化したほか、特定の種類のMAIT細胞(CD8陽性MAIT細胞)が増えていた。

 以上のことから、若尾准教授は「これまで、線維筋痛症の診断に関しては主観的な圧痛点試験しかなかったが、MAIT細胞の存在割合と表面抗原の解析により、健康な人、さらには似た症状を呈する関節リウマチや脊椎関節炎との鑑別が可能であることが証明できた」と結論している。

 この研究結果について、東京医科大学八王子医療センターの岡寛教授(同センターリウマチ性疾患治療センター部長)は「(現在、線維筋痛症の診断に使われている)1990年の米国リウマチ学会の分類基準では、脊椎関節炎でも基準を満たしてしまうことが多い。そこで、線維筋痛症と脊椎関節炎を見分けるマーカー(その病気の存在などを反映する物質)の発見が期待されていた。今回の研究では、MAIT細胞という新しい切り口で鑑別評価を行っている点が興味深い」とコメント。今後の研究の発展に期待を寄せている。

(あなたの健康百科編集部)

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