2015年06月03日 公開

デング熱検査キットの保険適用、専門家から疑問噴出

厚労省専門家会議で

 昨夏、69年ぶりとなる国内での感染例が発生し、東京・代々木公園を中心に160人の感染者が報告されたデング熱。今年5月には厚生労働省の指針に従い、厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)が、デング熱検査キットの保険適用を承認した。しかし、5月29日に開かれた厚労省の専門家会議では、保険適用の内容について疑問の意見が相次いだ。専門家らは、一般医療機関で幅広く検査できないことやコスト増などに懸念を示している(関連記事:デング熱の国内感染例、約70年ぶりに報告)。

保険適用は重症患者に限定

 デング熱はデングウイルスを病原とする感染症で、3~7日置いてから突然の発熱や激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、発疹などの症状が現れる。有効な治療薬はなく、予防にはウイルスを媒介するヤブ蚊(ヒトスジシマカやネッタイシマカ)との接触を避けることが重要。昨年の流行でも、ヤブ蚊が生息する公園での感染が多く報告され、自治体による蚊の駆除も行われていた。

 今回、保険適用が承認されたデング熱検査キットの費用は1回2,330円(保険点数233点)で、患者の自己負担は3割の場合で699円。ただし、保険適応の条件として「患者の集中治療に対応できる機関として別に定める保険医療機関に入院を要する場合に限り算定できる」との留意点が記載されている。つまり、対象となるのは入院が必要な重症の患者のみというのだ。これでは、早期発見のために診療所や一般病院などで幅広く検査することができなくなってしまう。

「集中治療が必要な患者は1人もいなかった」

 専門家会議で相次いで懸念が示されたのは、この留意点だ。出席した専門家らは、検査キットが保険適用されたことを評価する一方、次のような疑問を呈した。

「広く早期発生を把握する面では、一般医療機関でこの検査が保険診療でできないのは非常に残念」(東京都福祉保険局技監・前田秀夫氏

「デング熱の迅速な検査の意義は、(1)重症者のスクリーニング(編集部注:ふるい分けること)、(2)臨床医の判断のサポートに必要―の2点。疑い例が出るたびに保健所を通じて地方衛生研究所に届け出て検査となると、確定診断は患者が治った後、という可能性もある。予算の都合もあるだろうが、医療現場で広く検査ができるようになることが望ましい」(川崎市健康安全研究所長・岡部信彦氏

「これまで100例ほどデング熱を診療してきた経験から、マラリアや腸チフスなどとの鑑別が必要。デング熱がすぐに除外できなければ、他の疾患に対する検査などが増え、かえってコストがかかるということも考えていただきたい。算定医療機関に感染症指定医療機関が含まれていない点も気になる。さらに自分がこれまでたくさんの症例を診てきた中で、集中治療が必要な患者は1例もいなかったので(適用条件は)"絵に描いた餅"という印象がある」 (豊島病院副院長・味澤篤氏

 小森貴氏(日本医師会常任理事)からは「検査キット使用の動向を把握、分析し、当該部局に実態に見直しを含めた提言が行えるよう取り組んでいくべき」との意見が出され、多くの出席者が同意を示していた。

(あなたの健康百科編集部)

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