2015年08月17日 公開

トランス脂肪酸、死亡や心臓病の危険度が2~3割上昇

世界の研究を分析

 米当局は6月16日に、3年以内にトランス脂肪酸のもととなる「部分水素添加油脂(PHO)」の全廃を食品加工メーカーなどに指示した。心臓病になる危険性を高める"安全ではない食品"であることが理由だが、今回、トランス脂肪酸の悪影響を裏付ける新たな研究結果が報告された。カナダ・マックマスター大学健康科学部のラッセル・デ・ソウザ助教らは、世界で行われた20研究などを分析。トランス脂肪酸で死亡の危険度が34%、心臓病になる危険度が21%上昇すると、8月12日発行の英医学誌「BMJ」(2015; 351: h3978)に発表した。一方で、脳梗塞や糖尿病との関連は認められなかったという(関連記事:トランス脂肪酸全廃へ、年間2万人の心筋梗塞予防効果―米当局)。

飽和脂肪酸の悪影響は小さい?

 脂肪酸は、人間の体を作る上で不可欠な栄養素。たくさんの種類があるが、大きく飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2つに分けられる。飽和脂肪酸は体に悪い脂肪酸とされ、不飽和脂肪酸は体に良いとされるDHAやEPAなどが含まれるグループ。ところが、不飽和脂肪酸の中でもほかと性質が異なって悪さをするものがある。それがトランス脂肪酸だ。

 世界保健機関(WHO)や欧米などでは、飽和脂肪酸を総カロリー摂取量の10%未満に、トランス脂肪酸を1%未満に抑えるよう勧めている。しかし、最近の専門家の意見や研究では、飽和脂肪酸による悪影響はむしろ小さく、逆にトランス脂肪酸の方が高リスクと指摘されている。

 こうした背景からデ・ソウザ助教らは、飽和脂肪酸もしくはトランス脂肪酸と健康との関係を調べた研究を集めて分析を行った。

天然のトランス脂肪酸は悪影響なし?

 飽和脂肪酸の研究で対象となったのは、日本を含む7カ国で行われた3~12件(9万501~33万9,090人分)。分析の結果、死亡、心血管病による死亡、心臓病、脳梗塞、糖尿病(2型)のいずれも、飽和脂肪酸の摂取との関連が認められなかった。ただし、心臓病による死亡については、関連を完全に否定することはできなかったという。

 トランス脂肪酸の研究で対象となったのは、4カ国で行われた1~6件(1万2,942~23万135人分)。トランス脂肪酸摂取との関連が認められたのは、死亡(リスク34%増)、心臓病死(同28%増)、心臓病(同21%増)だった。一方、脳梗塞、糖尿病(2型)との関連は認められなかった。

 人間が口にするトランス脂肪酸はほとんどが人工のものだが、ウシやヤギなど反芻(はんすう)動物の肉や乳にも微量に含まれている。しかし、こうした天然のトランス脂肪酸と心臓病死や心臓病との間に関連は認められず、糖尿病では逆にリスクが減っていた。

 デ・ソウザ助教らは「今回得られた結果は、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸と心臓病の関連を調べた過去の研究結果を追認するもの」と結論。一方で「飽和脂肪酸とトランス脂肪酸に代わりに別の食品を推奨するならば、その食品が健康に与える影響を慎重に考慮すべき」と提言している。

(あなたの健康百科編集部)

関連リンク(外部サイト)