2015年12月02日 公開

バイリンガルが認知機能に関連、脳卒中後のダメージに差

インド研究

 認知機能といえば認知症の重大な要因の一つだが、2カ国語以上を話す「バイリンガル」であることが、その認知機能に大きく影響することが分かった。インド・ニザム医学研究所神経学のスワルナ・アラジ准教授らは、さまざまな文化を持つ人々が共生する同国のハイデラバードの脳卒中患者を調べた結果、単言語を話す「モノリンガル」に比べ、バイリンガルで脳卒中の後も認知機能が正常だった割合が2倍以上に上ったと、11月19日発行の米医学誌「ストローク」(電子版)に報告した。アラジ准教授らは、2カ国語以上を話す能力そのものよりも、2つ以上の言葉を切り替える能力によるものではないかと推測している。

バイリンガルは認知症発症が遅いとの報告も

 アルツハイマー病をはじめとする認知症を防ぐには、認知機能を刺激するような行動が良いとされている。人との会話もその一つだが、最近の研究から、バイリンガルでは高齢になっても認知機能が良好な人が多いこと、認知症の発症が遅いことなどが報告されているという。

 アラジ准教授らは、インド中南部の都市ハイデラバードにあるニザム医学研究所の脳卒中データベースに、2006~13年に登録された18歳以上の虚血性脳卒中(脳梗塞など)患者608人(バイリンガル353人、モノリンガル255人)を対象として調査を開始。対象者は、脳卒中の後遺症によって、(1)血管性認知症(189人、31.1%)、(2)血管性軽度認知障害(159人、26.2%)、(3)失語症(67人、11.0%)、(4)正常(193人、31.7%)―に分類した。

 分析の結果、認知機能が正常だった割合は、モノリンガルの19.6%に対し、バイリンガルでは40.5%と大幅に高かった。一方、「認知機能の低下」と判断される血管性認知症+血管性軽度認知障害は、モノリンガルで77.7%と高く、バイリンガル(49.0%)の1.5倍以上。失語症の割合は変わらなかった。

 また、バイリンガル群では注意力、言葉の流暢(ちょう)さ、視空間を認知する力が優れていたが、言語と記憶に関してはモノリンガルと差がなかったという。

"バイリンガルになれ"ではない

 今回の研究結果からは、「モノリンガルよりもバイリンガルで、脳卒中の後に認知機能が正常な割合が高かった」ことが示唆されたが、これは決して「2カ国語以上を話す能力が認知機能に良い」ということにつながるわけではない。

 研究が行われたハイデラバードにはさまざまな民族が暮らし、第1公用語のテルグ語に加えてウルドゥー語やヒンディー語、英語など多くの言葉が使われている。そうした日常的に話す相手によって言語を切り替える習慣が、認知機能に好影響を及ぼしている可能性が高いという。

 この点について、アラジ准教授らは「今回の研究結果は、モノリンガルの人が他の言語を学ぶべきことを示すものではない。若い時から知的な刺激のある活動の習慣を持つことが、脳卒中によるダメージから認知機能を保護することを示唆している」と述べている。

(あなたの健康百科編集部)

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