2016年06月13日 公開

けがや脳卒中だけではない! 心臓病にもリハビリが効果

「心臓リハビリテーション」専門家が解説

 リハビリテーション(リハビリ)は、病気やけがをした人が、できるだけ自立した元通りの生活を送れるように訓練を受けたり、環境を整えたりすることを指す。一般的に、病気に対するリハビリといえば、脳卒中患者へのさまざまな訓練が思い浮かぶのではないだろうか。しかし、心筋梗塞や狭心症、心不全などの心臓病にかかった患者に対しても、リハビリが有効であることはあまり知られていない。7月16・17日の日本心臓リハビリテーション学会の年次集会を前に、東京都で開かれたプレスセミナーでは、同学会理事長で国立循環器病研究センター循環器病リハビリテーション部の後藤葉一部長が心臓リハビリの効果について解説。「心臓リハビリは心臓病患者が快適で良質の生活を過ごすために必要なものであることを、もっと多くの人に知ってほしい」と呼びかけた。

安全に体力や運動能力を回復、不安や抑うつ状態も改善

 近年、治療技術の進歩を背景に、治療後に無事に退院できる心臓病患者は増える傾向にある。ただ、こうした患者は退院後も再び心臓病にかかる危険性が高い。たとえば、血行再建術といった治療のあとに無事に退院した心筋梗塞患者でも、その後、約3割は心臓病によって亡くなるか、再び入院している。また、退院後に抑うつ状態になる心臓病患者も多いという。

 一方、心臓病の治療を受けた人にとって、さまざまな側面から効果が期待できるのが、心臓リハビリだ。後藤部長によると、心臓リハビリは以前、体力を回復させ社会復帰につなげることが目標とされてきたが、現在は「病院などの施設に加えて自宅でもリハビリを行い心臓病の再発を防ぎ、生涯にわたってリハビリを続けながら活動的な生活を送ること」が主眼に置かれるようになってきたという。

 具体的に心臓リハビリで行われるのは、心臓に悪影響がないか確かめながら実施される運動療法(写真)や、食事療法、禁煙指導やカウンセリングなど。精神面でのフォローも行われ、不安や抑うつを取り除くことも心臓リハビリの目的の1つに位置付けられている。これらの多面的なアプローチによって、安全に体力を回復させ、自信を取り戻し、社会復帰につなげ、快適で質の高い生活を送れるようになることを目指す。

 報告されている心臓リハビリの効果には「運動能力が高まる」「狭心症や心不全の症状が軽くなる」「血管の機能が改善したり、体に有害な酸化ストレスを減らしたり、血管の病気が進行するのを防ぐ」「不安や抑うつ状態を改善する」「治療後の死亡率や心不全患者の死亡、再入院が減少する」といったものがある。また、こうした報告を根拠に国内外の心臓病の治療指針でも一部の心筋梗塞や慢性心不全の患者に対して心臓リハビリを行うことが強く推奨されているという。

日本では実施率,認知率ともに1割に満たず

 ところが、効果が高いことが分かっているにもかかわらず、わが国では心臓リハビリはあまりに普及していないのが現状だ。後藤部長によると、急性心筋梗塞の患者のうち退院後に病院などで心臓リハビリに参加している患者の割合は、米国やカナダ、英国、フランスなどでは23~41%に上るが、日本では10%に満たないという。

 この背景には、日本の医学教育カリキュラムに心臓リハビリが組み込まれていないことなどがあるようだ。また、一般の人でも心臓リハビリの認知度はかなり低く、後藤部長らが約5,700人を対象に実施した調査では、脳卒中や骨折手術後のリハビリについては「知っている」と回答した人が7割を超えていたのに対し、心臓リハビリを「知っている」とした人は7%に過ぎなかったという。

 後藤部長は「快適で活動的な長寿社会を実現するために、わが国でも心臓リハビリを普及させる必要がある」と強調。「そのために,もっと多くの人たちに心臓リハビリについて知ってもらいたい」と会場に呼びかけた。

(あなたの健康百科編集部)