2016年07月12日 公開

旅行で認知症予防できる可能性

東北大とクラブツーリズムが共同研究へ

 東北大学加齢医学研究所と旅行会社のクラブツーリズムは7月6日、産学連携の共同研究として「旅行が認知症予防にもたらす効果の研究」を開始すると発表した。今年5月に60歳以上の男女を対象に実施したプレ調査では、旅行が人生に対する満足度などに関係しており、脳の機能の維持に影響している可能性が示されたという。新たに始める研究では、脳画像や認知機能の評価などを含む詳しい検査を行い、旅行が脳の老化を防いだり、認知機能を維持するのに効果があるかどうかを調べるという。

歩くことによる「運動」と「知的好奇心」が脳に良い

 クラブツーリズムのツアーに参加したことがある60歳以上の男女45人を対象に、同社と東北大学加齢医学研究所が実施したプレ調査からは、以下のことが分かったという。

  1. 過去5年間の旅行回数が多いほど、自分の人生は「退屈」「面白くない」「意味がない」と感じる程度(失望感)が低い
  2. 「現地で人々と交流したい」という動機を持って旅行する人ほど、「人生が面白い」「今の生活は過去よりも幸せ」といった、人生に対するポジティブな気持ちや満足感が高い
  3. 「旅行先の文化や歴史を知りたい」と考えている人では、「人生で困難な状況に直面しても自分で対処できる」という自信を強く持っている

 この調査結果について、東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野の靖之教授は「頻繁に旅行に行くこと、また旅行の際に明確な動機を持っていることが脳機能に影響し、認知症にかかりにくくさせる可能性が示された」と説明。これまで国内外の研究で脳の老化(脳萎縮)を抑えるには「運動(軽い運動も含む)」と「知的好奇心の高さ」が重要であることが分かっており、その両方を経験できる旅行には認知症を予防する効果が期待できるとの見方を示した。

 同研究所とクラブツーリズムが新たに始める研究では、60歳以上の男女60人を旅行に頻繁に出かけるグループと、あまり出かけないグループに分け、脳画像検査や認知機能検査、主観的な幸福感などを調べる心理検査を行うという。期間は3年間の予定。

 クラブツーリズムは利用客の65%を60歳以上が占めており、今後、研究結果を旅行との脳の健康に関係するツアーや講座、イベントの企画に生かしたいとしている。

近場でも効果

 瀧教授によると、旅行によって期待できる効果には、新しい場所や経験で得られる「知的好奇心の刺激」「リラックス効果」「ストレス軽減」などが挙げられる。また、旅行中は歩く機会が増えるが、このことも脳への刺激になる。

 さらに、旅行に出かける前の計画段階でも、旅行のテーマや場所を考えることで、実行機能やプランニングなどに必要とされる「高次認知機能」が活性化するなどの良い作用が期待できる。旅行から戻った後、その体験を思い出すことも高次認知機能への刺激となるという。

 でも、「旅行はしたいけど、お金も時間もない!」という人はどうすればよいのだろうか。実は、飛行機や鉄道、バスなどで遠出しなくても、近場で行ったことのない場所を訪れるだけで脳への刺激が期待できるという。旅行には行けなくても、この程度なら気軽に試すことができそうだ。

(あなたの健康百科編集部)

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