2016年07月22日 公開

ある種類の薬で高齢者の骨折リスク2倍に

ノルウェー調査

 高齢者が「抗精神病薬」という種類の薬を飲むと、寝たきりの原因にもなる太ももの骨の股関節に近い部分(大腿骨近位部)の骨折リスクが2倍以上になる、とするノルウェーの高齢者を対象とした調査結果が米医学誌「Journal of the American Geriatrics Society」(2016;64:1203-9)に掲載された。調査を実施した同国のベルゲン大学医歯学部のマリット・バッケン氏らは「高齢者は大腿骨近位部を骨折しやすいだけでなく、抗精神病薬の使用者も多いため、この調査結果は重要」としている。

認知症のさまざまな症状に処方

 年を取ると、筋力や認知機能が低下するため転びやすくなるだけでなく、女性の場合は骨がもろくなるため、骨折リスクが高まる。中でも大腿骨近位部を骨折すると、痛みで歩けなくなってしまい、寝たきりとなってしまう可能性がある。したがって、高齢者の大腿骨近位部骨折をいかに予防するかは、高齢者本人にとっても、その家族にとっても大切な問題だ。

 今回、バッケン氏らが実施した調査からは、抗精神病薬という種類の薬を飲むと、この大腿骨近位部骨折のリスクが高まることが明らかになった。2005年時点で60歳以上だったノルウェー在住の男女約90万人を追跡して調べたところ、抗精神病薬を使用することで大腿骨金位部骨折のリスクが2倍以上に高まることが分かったという。

 抗精神病薬は基本的に統合失調症の治療に使用される薬だが、認知症の高齢者で幻覚や妄想、徘徊(はいかい)、暴力などが見られる場合に、こうした症状を和らげたり、落ち着かせたりするために処方されることも多い。したがって、この調査結果は現在の高齢者の医療に大きく影響しそうだ。

 ただ、バッケン氏らは「調査対象の高齢者が何の病気を治療するために抗精神病薬を飲んでいたのかについては調べていない。また、持病や抗精神病薬以外の薬が骨折リスクを高める原因だった可能性もある」として、「今回の調査結果だけでは抗精神病薬の使用と大腿骨近位部骨折の間に因果関係があるとは言えない」と説明。今後、抗精神病薬の使用によってなぜ大腿骨近位部を骨折しやすくなるのか、メカニズムを明らかにする必要があるとしている。

(あなたの健康百科編集部)