2016年08月26日 公開

全身温熱療法がうつ病の改善に有効か

 うつ病の治療は休養と薬だが、治療を続けていても思うように改善せず、薬がどんどん増えていくことに不安を感じている患者もいるだろう。そんな悩めるうつ病患者にとって朗報となりそうな研究結果が、ウィスコンシン大学の研究グループから報告された。うつ病の治療に、体の表面に赤外線を照射して体全体を温める「全身温熱療法」が有効である可能性があるというものだ。研究の詳細は、米医学誌「JAMA psychiatry」(2016;73:789-795)に発表されている。

治療効果は6週間継続

 うつ病の患者は近年大幅に増加している。厚生労働省が発表した「平成26年患者調査」によると、うつ病などの気分障害で医療機関にかかっている人の数は111万6000人と、調査開始以来、最多となった。

 うつ病は、脳の病気であり、脳の働きに何らかの問題が生じている状態だと考えられている。気持ちの問題ではないため、気合いや気力で解決できるものではない。うつ病を放っておくと悪化して治りにくくなったり、その後の社会生活に多大な影響を及ぼしたりするので、できるだけ早期に治療を始めることが必要だ。

 治療の基本は、「十分な休養」と「抗うつ薬」。医療機関を受診すれば、まずはゆっくり体を休めるよう促され、抗うつ薬が処方されるだろう。だが、薬を飲めばすぐによくなるという訳ではなく、抗うつ薬による治療には限界もある。そこで、新しい治療法が模索されているのだ。

 研究グループは、うつ病の診断基準を満たし、薬物治療をしていない18~65歳のうつ病患者30人を対象に、全身温熱療法がうつ病治療に有効かどうかを検討した。

 この全身温熱療法は、赤外線を体に当てて全身を加温するという治療法で、主にがんの治療で行われる(日本では、電磁波で体の一部を加温する局所温熱療法が一般的)。体の表面を温め、その熱が血流によって広がることで、体全体の温度を上昇させるという仕組みだ。設定温度は治療目的によって異なり、38度台~40度台、場合によってはそれ以上に設定されることもあるようだ。

 今回の研究では、対象者を、全身温熱療法を行う16人と、偽の治療を行う14人に分け、治療の前後に17項目の「ハミルトンうつ病評価尺度」という心理検査を行い、そのスコアでうつ病の状態を比較した。治療直後に、「自分は全身温熱療法を受けた」と信じていたのは、全身温熱療法グループ15人、偽治療グループ10人だった。

 分析の結果、全身温熱療法グループは、偽治療グループに比べて、治療後6週間を通じて心理検査のスコアに改善が見られ、偽治療グループとの差は、1週目が-6.53点、2週目が-6.35点、4週目-4.5点、6週目-4.27点だった。治療後に起こった不調は、両グループとも軽いものだった。

 研究グループは「うつ病治療に対する全身温熱療法は、安全で、即効性かつ持続性のある有効な治療法だ」としている。

(あなたの健康百科編集部)