2016年11月09日 公開

潜在的睡眠不足は平均1時間、健康にも影響

 日本人の睡眠時間は世界的に見ても極めて短いといわれてきたが、最新の国民生活時間調査(NHK放送文化研究所・2015年)によると1日の国民全体の睡眠時間は、平日7時間15分、土曜7時間42分、日曜8時間3分。1995年以降、平日の睡眠時間は短くなる傾向にあったが、その流れが止まったという。とはいえ、十分な睡眠が毎日とれていると言える人は、少数派だろう。
 現代人の多くが自覚できない睡眠不足を抱えている危険性を明らかにし、その解消により眠気のみならず、糖代謝などの内分泌機能の改善が認められたと国立精神・神経医療研究センターの研究グループが科学誌「Scientific Report」(2016 Oct 24;6:35812)に発表した。

浅い眠りも内分泌機能に重要な役割

 同研究グループは、平均年齢23.4歳の男性15名を実験室内で9日間にわたり12時間の睡眠をとってもらう実験を行った。一般的にこうした条件下では実験開始直後は日頃の睡眠不足の反動で長時間眠り、日ごとに睡眠が満たされ、睡眠時間が減少する。その結果、必要睡眠時間は平均8時間25分となった。

 また、この睡眠時間の実験に先立って2週間にわたり自宅で睡眠時間を測定し、習慣的睡眠時間を算出した。その結果、自宅での習慣的睡眠時間は平均7時間22分であった。過去の行われた研究で健康な23歳の睡眠時間は平均7時間18分とされ、実際に実験に参加した15名も普段の生活で睡眠不足を全く自覚していなかった。

 しかし、必要睡眠時間と習慣的睡眠時間の差は、自覚していない睡眠不足と考えられ、平均1時間と算出された。15名中13名が自覚なき睡眠不足であった。この自覚なき睡眠不足を「潜在的睡眠不足」と命名した。潜在的睡眠不足は体に負担となる睡眠不足でありながら、眠気の症状に乏しいため本人が自覚していない睡眠不足をいう。

 実験によれば、9日間かけて行った睡眠不足の解消によって、眠気だけでなく生活習慣病やストレスに関わる内分泌機能にも改善がみられた。

 具体的には、空腹時の血糖値が低下し、基礎インシュリン分泌能が増加、甲状腺ホルモンや遊離サイロキシン濃度が上昇、逆にストレスホルモンである副腎皮質刺激ホルモンやコルチゾール濃度が低下した。

 実験では、睡眠解消で延長された睡眠の大部分は浅いノンレム睡眠とレム睡眠で、深いノンレム睡眠はほぼ同じ量に保たれていた。これは睡眠不足時には深い睡眠が最優先され、浅い睡眠から削られていくこと意味していた。が、浅い睡眠は代謝やストレス応答などの内分泌機能の維持にとって重要であることが明らかになった。

「休日の寝だめ」で潜在的睡眠不足をチェック

 この研究では、「休日の寝だめ」の長さが潜在的睡眠不足の程度を推測する1つの目安となることが分かった。休日の寝だめ分に相当する「睡眠延長初日の睡眠時間と習慣的睡眠時間との差(睡眠リバウンド)」が潜在的睡眠不足と強く相関していた。

 休日に寝だめを行わないで済む時間の確保が、潜在的睡眠不足を予防する指標になるという。睡眠リバウンドがどの程度あるか自分で試してみるには、個室で目覚ましをかけず、遮光カーテンを引いて自然に覚醒し、二度寝が出来なくなるまで眠り、実質的に眠った時間を合計し、普段の睡眠時間との差があるほど、潜在的睡眠不足の危険性が高いと考えらる。

 今後のさらなる研究が必要であるが、研究グループによると自覚症状のない睡眠不足でも心身に負担を生じさせている危険性が明らかとなり、「睡眠不足は健康を害する恐れのある従来知られていなかった生活習慣の盲点として今後も注意を喚起したい」としている。

(あなたの健康百科編集部)

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