2018年07月19日 06:00 公開

歯みがき粉が薬剤耐性の拡大に関係

 抗菌薬(抗生物質)の使いすぎや不適切使用によって「耐性」を獲得し、それまで使用していた抗菌薬が効きにくくなった細菌を、薬剤耐性菌と呼ぶ。現在、薬剤耐性菌の広がりは世界的に大きな問題となっており、日本では一昨年(2016年)4月、抗菌薬の使用量を2020年までに3分の2に削減すると定めた「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」が策定された。しかし、このほど豪・クイーンズランド大学が発表した研究(Environment International 2018年6月11日オンライン版)によると、抗菌薬以外にも家庭用の歯みがき粉や石鹸の使用により、薬剤耐性が誘発されている可能性があることが分かったという。

殺菌剤トリクロサンが薬剤耐性を誘発

 クイーンズランド大学のJianhua Guo氏が主導する研究グループは、歯みがき粉や石鹸、食器用洗剤など、2,000以上の家庭用製品に使用されているトリクロサンという殺菌剤に注目。このトリクロサンが大腸菌の薬剤耐性にもたらす影響を検討した。

 その結果、1リットルあたり0.2ミリグラムという濃度のトリクロサンが、野生型大腸菌において薬剤耐性を誘発することが分かった。そして、トリクロサンが発生させた酸化ストレスによって遺伝子変異が引き起こされていたという。

 アメリカではFDA(米国食品医薬品局)の指導により、2016年にトリクロサンの使用が禁止されたが、薬剤耐性との関連を裏付ける明確なエビデンスがなかったため、この方針は他の国々で採用されていなかった。しかし、今回の研究結果を受けてGuo氏は、「この発見は、日用品に使われるトリクロサンが薬剤耐性の拡大を促進するという強いエビデンスを提供している」とコメントしている

 現在、薬剤耐性菌の拡大は公衆衛生にとって大きな脅威となっており、年間で約70万人が死亡している。もし、何の対策も取らなければ、2050年までに年間で約1,000万人が命を落とすとも言われる。日本もFDAによる禁止措置を受け、2016年9月に厚生労働省が製造販売企業に対してトリクロサンを含まない石鹸に切り替えるよう促す通達を出した。今回の研究結果を受け、トリクロサンの使用を規制する動きは世界的な広がりを見せるだろうか。

(あなたの健康百科編集部)