2018年08月06日 06:00 公開

その異変、実は急性心筋梗塞かも

 日本では毎年20万人が命を落としているという心臓病。良く知られるのは、突然、胸が圧迫されるような激しい痛みが長く続く急性心筋梗塞だ。しかし、胸痛以外の多様な症状を訴えるケースもある。たとえば、糖尿病の患者では無痛性の心筋梗塞が起こりやすいなど、心臓の病気だと気付かない患者も多いと、専門医は注意を呼びかけている。日本循環器学会理事で日本インターベンション治療学会広報委員長を務める、藤田保健衛生大学(10/10から藤田医科大学に改称)循環器内科の尾崎行男主任教授は、急性心筋梗塞を引き起こすリスク、症状、治療法などについて講演を行った。

原因は加齢やコレステロールによる動脈硬化

 全身に血液を送るポンプの役割を果たしている心臓は心筋という筋肉でできたラクビーボールのような臓器で、冠動脈という3本の血管が取り巻いて心筋を栄養している。冠動脈は、正常な状態ではゴムのように弾力があるが、加齢や悪玉コレステロールの増加により内部の壁が硬くなり、動脈硬化と呼ばれる状態に陥る。

 さらに、コレステロールが蓄積しプラークと言われる「こぶ」が生じて血管内部を狭めてしまうと、血流が悪くなり、結果的に心筋に必要な酸素や栄養が十分に行き渡らなくなる。この状態は狭心症と呼ばれ、胸の痛みを引き起こす原因になっている。狭心症の場合、胸痛や冷や汗などの症状は数分から15分程度で収まることが多いようだ。

 一方、急性心筋梗塞は、何らかの原因でこの動脈硬化プラークが破れて、止血のために血栓が出来たり、あるいはプラーク表面にびらんという傷ができ修復のために血栓が付いて、この血栓で血管の一部が完全に塞がってしまう状態のこと。血流が止まることで心筋に酸素や栄養は全く運ばれなくなり、心筋が部分的に壊死してしまうのが急性心筋梗塞である。痛みや息苦しさは30分以上続くことが大半で、最悪の場合は死亡する。ちなみに、脳内の血管が詰まって脳血流が途絶えた状態が脳梗塞だ。

高血圧、喫煙、脂質異常など多様なリスク

 動脈硬化は、狭心症や心筋梗塞の原因です。この動脈硬化が進行するリスクとして、悪玉コレステロールの増加や善玉コレステロールの減少などの脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙、肥満、男性、そして加齢などがある。いずれも、悪玉コレステロールが血管の壁に吸収されやすくなる要因になっている()。

図. 狭心症・心筋梗塞のリスク

(尾崎行男氏提供)

多くの患者が訴える「放散痛」、痛みのないケースも

 実際に急性心筋梗塞が起きると、どのような症状が現れるのか。代表的とされるのは、上記の"突然、胸が圧迫されるような激しい痛みが30分以上続く"ことだが、数多くの急性心筋梗塞患者を診療してきた尾崎主任教授は、「必ずしも激しい胸痛を覚えるとは限らない」と話す。

 日本心血管インターベンション治療学会が一般公開しているサイト(「急性心筋梗塞.com」)で紹介している患者インタビュー映像を見ると、発症時に「痛みは全くなく、冷や汗がたくさん出た」、「胸に鉛のボールを飲み込んだような感じ」、「左の肩甲骨が張った感じ」と、症状はさまざま。これらは放散痛(または関連痛)と呼ばれ、胸(心臓)とは別の場所で痛みを感じるものだ。

 さらに、痛みすら感じない無痛性心筋梗塞(無症候性心筋虚血の一種)もあるという。原因は、例えば糖尿病患者の場合、罹病期間が長いほど神経障害を合併するリスクが高まり、それによって痛みに鈍感になり、結果として心筋梗塞の痛みを感じにくくなっているからだ。

来院後90分以内の治療開始で9割が助かる

 一刻を争う急性心筋梗塞の治療では、症状が現れたら可能な限り早く医療機関を受診することが重要だ。ただ、我慢してしまったり、重大な病気と思わなかったりして来院が遅れるケースも多い。来院後の治療目安とされるのは90分以内。これは、患者の来院(Door)からカテーテルを入れバルーン(Balloon)などで血管内を拡張する手術を開始するまでの時間(Door-to-Balloon Time; DBT)を指す。この場合の治療成功率は9割以上といわれる。近年は、従来のバルーンに加え、ステント(網目状の金属製の筒)を用いて冠動脈を持続的に拡張する方法も一般的になっている。

 急性心筋梗塞の治療の現状を見ると、日本は欧米に比べて検査が入念に行われ、治療技術も優れているため、手術の成功率は高く、再発率も低い。この点は、最近のデータで確認されている。尾崎主任教授は「発症したら、夜中であっても早く病院を受診してほしい。家族と同居しておらず助けを求めにくいケースもあるようだが、ためらわず救急車を呼ぶことが大切」と講演を締めくくった。

(あなたの健康百科編集部)