2018年08月07日 06:00 公開

宇宙マウスがストレスと病の関連示す

金井飛行士のミッション内容を紹介

 168日間の長期宇宙滞在を終え、今年(2018年)6月3日に地球に帰還した宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙飛行士の金井宣茂氏が7月26日、東京都の昭和女子大学でミッション報告会を行った。報告会では、同氏が国際宇宙ステーション(ISS)滞在中に取り組んだマウスの飼育実験を紹介。その成果がストレスと病気の関連性を解き明かす可能性があるという。 

マウス実験から病気を防ぐ遺伝子の役割を検討

 報告会で金井氏は、宇宙滞在中の出来事を振り返りつつ、自身が取り組んだ実験の内容を紹介した。その1つがマウスの飼育実験である。

 この実験では、通常のマウスと、さまざまなストレスに対する生体防御機構に関与すると考えられるNrf2遺伝子を除いたマウスを同時に飼育し、その様子を調べた。

 その結果、Nrf2を除いたマウスは、通常のマウスと比べ、宇宙滞在前より体重の増加や脂肪の蓄積が抑えられていた。実験で用いたマウスは成長期にあたるため、Nrf2を除かれたマウスでは健全に育たなかったことになる。

 Nrf2に関しては、多発性硬化症という脳や脊髄に炎症を生じる病気や、糖尿病性腎臓病の治療に役立つといった報告もあり、今回の実験結果が、こうしたさまざまな病気の研究を進歩させる可能性があるという。

 また、同氏は世界で初めてこれらのマウスに採血し、全12匹を生還させることに成功した。

 この成功により、多様な病気に関わる遺伝子を調べるマウスの実験がさらに進む見込みである。

入念な準備、優れたスタッフ、機器が成功の鍵

 金井氏は今回のような成果が得られた理由として、「マウスの実験などに関わった優れた日本人研究者やスタッフ、日本で開発された高性能な飼育装置(写真)に恵まれたためである」と語った。

 さらに、「入念な準備をして取り組んだことも成功の要因になった」と強調し、「宇宙へ行く前に、研究者から実験の目的や重要性を十分学ぶとともに、マウスの採血を繰り返し行い、慣れるよう努めた」と付け足した。

 なお、報告会の締めくくりには、来年末ごろから約半年間、宇宙に滞在する予定の野口聡一宇宙飛行士が登壇し、「金井氏がもたらした成果を受け継ぎ、同氏に負けないように宇宙でしっかりと任務を果たしていきたい」とあいさつした。 

報告会にて金井氏が仕組みを説明した小動物(マウス)飼育装置

(あなたの健康百科編集部)