2018年10月17日 06:00 公開

体外受精児は高血圧になりやすい?

 不妊治療を望む人は少なくない。医療技術の進歩とともに、体外受精や顕微授精、卵子・精子・受精卵の凍結保存などを行う生殖補助医療(ART)によって生まれる子どもも増えている。そうした中、スイスなどの研究グループが、ARTによって生まれた子どもを対象に調査を実施し、ARTで生まれた子は高血圧を発症するリスクが高いと報告した。詳細は、医学誌「Journal of the American College of Cardiology」(2018;72:1267-1274)に掲載されている。

5年で高血圧に進展

 1978年に英国で世界初の体外受精児が誕生して以来、ARTは自然妊娠がかなわない多くの人に恩恵をもたらした。米国では、ARTによって生まれる子どもの数が全体の1.7%を占めるとされ、日本でも2015年には出生数が5万1,001人に上っている。

 ARTで生まれた子どもは、健康であっても早期から血管の老化が見られるとの報告が相次いでいる。マウスでは、ARTによる早期の血管老化から高血圧に至ることが示されているが、人での長期的な影響は不明である。

 そこで研究グループは、ARTによって生まれた健康な子ども54人(平均年齢16歳)と年齢および性を一致させた43人(対照群)を対象に、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)を実施。血管内皮機能や動脈の硬化度、血管壁の肥厚についても評価した。ART群と対照群は、BMIや出生時体重、妊娠週数、母親のBMI、喫煙状況、心血管リスクプロファイルが類似していた。研究グループは、5年前にも同じ子どもを対象に同様の測定を行っている。

 その結果、24時間自由行動下での血圧は、対照群に比べART群で高かった(最高血圧は119.8±9.1mmHg vs. 115.7±7.0mmHg 最低血圧は71.4±6.1mmHg vs. 69.1±4.2mmHg)。また、高血圧の診断基準となる130/80mmHg以上に達していたのは、対照群では1人だけだったのに対し、ART群では8人に上った。

 また、ARTによって生まれた子どもは、上腕動脈の血流依存性血管拡張反応(FMD)が低下し、脈波伝播速度(PWV)および頸動脈内膜中膜複合体の肥厚度(IMT)は上昇。早期から血管の老化が見られた。

 研究グループは、5年前に実施した血圧測定では、両群間に差がないことを確認している。たった5年で血圧に差が生じたことについて、研究グループは「ARTにより生まれた子どもは、心血管疾患のリスク因子のない健康な状態であっても早期から血管の老化が生じており、それが高血圧を招いているようだ」とコメントしている。

(あなたの健康百科編集部)