2018年11月16日 公開

魚が大動脈疾患死を予防か

国内36万人超で検討

 高齢化が加速する日本では、大動脈瘤や大動脈解離といった大動脈の疾患が増えつつある。国立がん研究センターと筑波大学などの研究グループは、国内で実施された8件の大規模疫学研究の参加者36万人以上のデータを使って、魚を食べる頻度と大動脈疾患による死亡リスクとの関連を検討。魚をほとんど食べない人は、大動脈疾患による死亡リスクが高くなることを明らかにした。魚の摂取と大動脈疾患死との関連を疫学的に示したのは世界初である。詳細は、「Clinical Nutrition」(電子版)に掲載されている。

日本人36万人の解析で魚摂取の有効性を検討

 大動脈疾患には、心臓から全身に血液を送る太い血管に瘤ができる大動脈瘤と、その大動脈の内側に亀裂が入る大動脈解離がある。日本では、大動脈疾患による死亡率はそれほど高くなかったが、高齢化に伴い近年上昇傾向にある。医療技術が進歩した現代でも、大動脈の瘤が破裂したり、大動脈が裂けたりすれば、急死のリスクとなることから予防はとても重要だ。

 大動脈疾患の発症には動脈硬化が関与していて、予防には魚の摂取が有効であると考えられているが、科学的根拠はほとんど示されていない。それは、大動脈疾患が増えているとはいえ、がんや脳卒中ほど多い訳ではなく、大規模な疫学研究であっても単独での検討が困難だったためだ。

 そこで研究グループは、国内で実施された8件の大規模疫学研究から、36万6, 048人の男女を対象に統合的な解析を行い、日本人における魚の摂取頻度と大動脈疾患死亡リスクとの関連を調べた。各疫学研究で使用している食習慣アンケートの結果から、魚の摂取頻度を、①ほとんど食べない②月に1~2回③週に1~2回④週に3~4回⑤ほとんど毎日―の5つに分類した。解析に当たっては、性、年齢、BMI、喫煙、飲酒、地域を調整した。

死亡リスクは大動脈解離2.5倍、大動脈瘤2.0倍

 解析の結果、魚の摂取頻度が週に1~2回のグループと比較して、ほとんど食べないグループでは、大動脈解離で死亡するリスクが2.48倍、大動脈瘤での死亡リスクは1.99倍、これらを合わせた大動脈疾患全体での死亡リスクは1.93倍と、いずれもリスクの上昇が見られた(図1、2)。また、月に1~2回のグループでは、大動脈瘤で死亡するリスクが1.86倍とやや高い傾向だったが、大動脈解離での死亡リスクは1.15倍、大動脈疾患全体では1.13倍だった。一方、週に3~4回、ほとんど毎日のグループはともに、死亡リスクが週に1~2回のグループと同程度だった。

 今回の結果について、研究グループは「魚をほとんど食べない人は、大動脈疾患で死亡するリスクが上昇するが、少なくとも月1~2回食べていれば、そのリスクを抑制できることが示された」とし、魚の摂取が極端に少なくならないことが、大動脈疾患死の予防にとって重要であるとの考えを示した。加えて、「魚の摂取量が多いと心筋梗塞のリスクが低下することが分かっている。したがって、魚の摂取が極端に少なくならないよう気をつけるだけでなく、より多く摂ることが循環器疾患の予防につながる」とコメントしている。

(あなたの健康百科編集部)