2018年11月20日 公開

高度な手術、若手育成に最新VR活用

 近年、新入社員や若手社員への研修にバーチャルリアリティ(VR)を導入する企業が増えている。ゴーグルをかけるだけで実際の仕事現場を疑似体験できるVRなら、時間や場所を取らず効率的に臨場感のある研修を実施することができるためだ。このほど、製薬・医療機器メーカー大手のジョンソン・エンド・ジョンソンが、医療研修用のVRサービスを開発したと発表。11月5日、都内で記者発表会を行った。

不整脈専門医は若手育成が急務

 今回発表されたのは、心房細動に対するカテーテルアブレーションの研修用VRだ。カテーテルアブレーションとは、足の付け根や首の静脈などからカテーテルを挿入し、不整脈を引き起こす心臓の局所を焼灼する治療法のこと。手術には高い技量が必要とされるため、若手医師に対する研修方法の確立が課題とされてきた。

 高齢化の進展に伴い、不整脈、とりわけ心房細動の患者数は増加を続けている。2030年には100万人を超えると予測されているが(Int J Cardiol 2009; 137: 102-107、図)、その一方で日本の不整脈専門医の数は962人(2018年5月1日現在)と不足しており、カテーテルアブレーションの研修に対するニーズは高いと言える。

 図.心房細動の推定患者数と有病率の予測 

(記者発表会資料より)

手術に立ち会わなくても学習可能

 このたび同社が開発したVRサービスには、カテーテルアブレーションに習熟した専門医が実際に行った手術の模様を、高精度360度カメラで撮影した動画が収録されている。執刀した専門医による解説も収められており、研修受講者は手術現場に立ち会わなくても効果的に学習ができるという。

写真. VRゴーグル装着時の様子


(ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社提供)

 開発を担当した同社バイオセンスウェブスター事業部の長谷川聡史氏は、「いつでも、どこでも、何度でも、名医の手術を解説付きで研修することが可能」と話す。動画コンテンツは既に完成しており、年内の実用化を目指すという。

 同社とともに開発を担当したVR機器メーカーのジョリーグッドは、これまで造船、製鉄、食品といった業界でのVR研修サービスの提供に実績を持つが、医療業界への進出は今回が初めて。代表取締役CEOの上路健介氏は、「VRを用いれば、現場を止めずに研修ができる」と述べ、操作が簡便で時間やコストのかからないVRは、企業や自治体、さらには医療現場の研修で今後も利用が広がっていくだろうと展望した。

(あなたの健康百科編集部)