2018年11月21日 06:00 公開

知ってた? 心房細動を防ぐ10カ条

 心房の拍動数(心拍数)が300回/分以上になり、心臓が速く不規則に拍動する心房細動(AF)。心筋梗塞、狭心症、弁膜症などの心疾患や、高血圧、糖尿病などに合併することが多いが、健康な人も発症することがあり、放っておくと脳梗塞の原因にもなりかねない。脳梗塞の約3割はAFが原因とも言われている。社会の高齢化に伴い、AFを発症する患者数は年々増え続けているが、発症を防ぐ手立てはあるのか......!?「AFはライフスタイルを改善するだけでもかなり予防できます」。そう語るのは専門家の野上昭彦氏(筑波大学医学医療系循環器不整脈学寄附講座教授)。日本循環器学会のプレスセミナーで同氏が提唱した「ライフスタイル改善10カ条(表)」から、"今からできるAF予防"のエッセンスを紹介する。

近年分かってきた新たなリスク

 50年前には、"特に他に病気がない"孤立性AFが占める割合は30%とされていた。しかし真の孤立性AFの割合は3%ほどで、残りの27%は別のリスクに起因することが近年分かってきた。つまり、たとえ健康な人でも、何かしらのリスクを持っていればAFを発症する可能性があるということだ。もちろん、遺伝的な影響は大きいが、残念ながらそれに対する予防法はない。一方、新たに分かってきたリスクの中には、今すぐ改善できるものがある。

禁煙:非喫煙者レベルにまでリスクが下がる人も

 野上氏がまず挙げるのが、「酒とたばこ」だ。喫煙は、肺がんや心筋梗塞、狭心症などのリスクとして周知されているが、同氏によれば、「喫煙者は不整脈になりやすい」ことを知らない医師も少なくないという。喫煙経験者と非喫煙者を16年間観察したデータによると、16年目のAF発症率は非喫煙者の約5%に対し、喫煙経験者では約10%と2倍の開きがあった。

 愛煙家にとって「何本までなら良いのか」が気になるところだが、「1日1本でも40本でも、AFを引き起こすリスクは変わらない」という。では、たばこを止めた場合はどうか。これについては、喫煙指数(1日に吸う本数×年数)が800(例えば1日40本×20年)以上の喫煙者の場合、残念ながら、禁煙してもAFの発症リスクはほとんど変わらない。しかし800未満であれば、禁煙して数ヵ月後には非喫煙者と同じレベルにまでリスクを下げることが可能だとしている。同氏が、禁煙を「今からすぐできること」の第一に挙げる理由だ。また、近年普及している加熱式たばこもリスクはほぼ同じで、受動喫煙にも注意が必要だという。

 アルコールについては、1日当たり1ドリンク(アルコール12g=ビール300mL=ワイン1杯)未満に抑えることが必要。愛飲家にとっては厳しい量かもしれないが、同氏によると「週単位のトータル量を抑えるようにするなど、工夫すればそれほど無理なレベルではない」そうだ。

過度の運動と刺激物を避ける

 いわゆるメタボ(糖尿病など生活習慣病になり易い状態)と共通する項目だが、肥満解消、適度な運動、食生活の改善も10カ条として野上氏は挙げる。しかし、運動をし過ぎても、AFのリスクが上がることが分かってきたという。これを示す研究データが興味深い。90kmを走破するクロスカントリー選手5万人を完走時間別に分けて、その後8年間のAF発症率について調査したもの。それによると、完走時間が長いほどAFの発症率は低かった。また、完走数別に検討した別の研究でも、完走数が少ないほど、AF発症率が低いことが示されている。つまり、過度の運動(持久力を伴うエンデュランススポーツ)は、AFの新たなリスクであることが分かったのだ。

 また、野上氏は刺激物を避けることも重要とし、筆頭に挙げたのがカフェインだ。しかし,これはお茶やコーヒーなどに含まれる自然のものではなく、人工的なカフェインのこと。いわゆるエナジードリンクや錠剤に添加されており、これらの過度な摂取には注意するよう呼びかけている。

感情の起伏をコントロール

 もちろん、ストレス解消も大事だ。AFと感情との関連性について調べた研究によると、AF発症直前の感情が「幸福感」の場合、AFを発症するリスクは約10分の1(0.12倍)と低いが、「悲しみ」で5.59倍、「怒り」で4.46倍、「ストレス」で3.07倍といずれもリスクは高かった。同様に1日の終わりの感情が「爽快」の場合、翌日にAFを発症するリスクは0.81倍と低いが、「悲しみ」で1.25倍、「怒り」で1.73倍、「ストレス」で1.88倍と高かった。野上氏は「落ち込まない、怒らない、ストレスを溜めないなど、ある程度自分でマインドコントロールすることが重要」としている。

表.心房細動予防のためのライフスタイル改善10カ条

(野上昭彦氏提供)

 野上氏が推奨するAF予防のための10カ条のうち、治療が必要なものを除いた7カ条については、今すぐにでも自分で取り組むことができる。同氏は「禁煙と節酒は健康面だけでなく、コストパフォーマンスにも優れる。是非、今から取り組んでほしい」と訴えている。

(あなたの健康百科編集部)