2018年12月13日 公開

妊孕性に関する情報は妊活に役立つ?

 いつか子どもを持ちたいと考えている人が妊孕性(にんようせい=妊娠しやすさ)に関する情報提供を受けた場合、その後の妊活に影響が出るのだろうか。秋田大学大学院環境保健学講座講師の前田恵理氏らは、2015年に行った妊孕性に関する教育研究の参加者について、2年後(2017年)の状況を調査し、その結果を医学誌『Human Reproduction』(2018; 33: 2035-2042)に発表した。パートナーがいる人に限定した解析から、妊孕性に関する情報提供を受けた人は、妊娠中の葉酸摂取に関する情報を提供された人に比べて、新たな子どもの生まれるタイミングが早いことが分かったという。

パートナーのいる人が影響を受けやすい

 前田氏らが2015年に行った研究は、妊孕性に関する情報提供が、将来子どもが欲しいと考えている人にどのような影響を及ぼすかを調査したもの。20〜39歳の一般成人男女を、妊孕性に関するパンフレットを読むグループ(介入グループ)と、それ以外の情報が書かれたパンフレット(妊娠中の葉酸摂取に関するパンフレット、もしくは産休・育休や出産育児一時金に関するパンフレット)を読むグループ(非介入グループ)に分けて比較した。その結果、介入グループではパンフレットを読んだ後に妊娠・不妊に関する知識レベルが上昇した一方で、不安な気持ちになる人が多いことが分かった(Human Reproduction 2016; 9: 2051-2060)。

 今回の研究では、2015年の研究に参加した1,455人のうち、再調査を承諾した743人(男性383人、女性360人)が対象となった。妊孕性に関する情報提供を受けたことが、その後の妊活にどのような影響を及ぼしたかが調査された。

 調査の結果、妊娠しやすさや不妊に関する知識レベルは、介入グループでは2年を経てもなお上昇していたが、非介入グループでは変化は見られなかった。新たな子どもが生まれた人、妊娠を希望して医療機関を受診した人の数もグループ間で差がなかった。

 しかし、パートナーのいる人に限定して解析したところ、介入グループに割り当てられた人では、新たな子どもの生まれるタイミングが早いことが分かった。前回調査後の1年間に新たな子どもが誕生した人の割合は、介入グループのパートナーありの男性で8.8%、パートナーありの女性で10.6%であり、葉酸摂取に関するパンフレットを読んだ人(パートナーありの男性1.4%、パートナーありの女性2.3%)に比べて明らかに高かった。また、妊娠を希望して医療機関を受診した人の割合は、介入グループのパートナーありの男性で12%であり、産休・育休や出産育児一時金に関するパンフレットを読んだパートナーありの男性(1.5%)と比較して高かった。

 以上から、同氏らは「妊娠しやすさや不妊に関する情報は、パートナーがいる人の妊娠・出産に関する意思決定の時期を早める可能性がある」と考察している。

 

研究者コメント
前田恵理氏(秋田大学大学院環境保健学講座講師)

 妊娠・出産は、パートナーとの関係やパートナー側の希望、経済的な安定、健康問題など多くの要因がからみあう事象です。そのような中で果たして、医学的な情報提供が妊娠・出産の決断に影響するのか、これまで明らかではありませんでした。今回の研究では、2年間追跡できた人の割合が50%程度と少ないなど課題もありますが、「パートナーがいる場合、情報提供が妊娠・出産の決断を後押しする」可能性を世界で初めて示したものです。
 男女とも、妊娠する生物学的な能力は年齢とともに下がっていきます。特に30代からは、不妊症や妊娠・出産合併症も増えます。こういった情報を広く伝えていくことが、社会全体の妊娠・出産に関わる医学的リスクを下げることにつながるかもしれません。

(あなたの健康百科編集部)