2018年12月18日 公開

受精の時間は短い方がいい?

 卵子と精子を体外で人為的に受精させる体外受精法(IVF)。培養液中で卵子と精子を出会わせる操作は"媒精"と呼ばれる。精子は活性酸素種(ROS)を発生させる。ROSは受精の際に一定レベル必要ではあるが、過剰なROSは精子のみならず、卵子にも悪影響を及ぼし、妊娠率低下の原因となり得る。このため、精子が卵子に進入した後は、ROSが増加した培養液に、なるべく卵子をさらさないことが望ましいとされる。これまでに、「媒精時間が短いほうが妊娠継続率は高い」とする研究データはいくつかあるが、いずれも小規模なものである。一般的に採用されている媒精時間は17~20時間。では、これを短縮させると出生率は上がるのか。その答えは、何としても妊娠したい女性やパートナーにとって重大だ。中国・Tongji University School of MedicineのZhi Qin Chen氏らは、IVFを予定している女性320人を集め、媒精時間と出生率(妊娠22週以降の出生)との関連を検討。成績を英国の医学誌『Human Reproduction』(11月15日オンライン版)に報告している。

時間の長短による出生率への影響は見られず

 この試験に参加したのは、初回または2回目のIVFを予定している女性320人。そのうちの160人には通常の媒精時間(20時間)で得られた胚(細胞分裂を開始した受精卵)が移植され(通常グループ)、残りの160人には短い媒精時間(3~4時間)で得られた胚が移植された(短縮グループ)。媒精には、両グループとも1mL当たり運動精子30万~120万個を含む培養液が使われた。

 検討の結果、両グループの出生率に臨床的に意味のある差は認められなかった(通常グループ36.8% vs. 短縮グループ33.0%)。また、妊娠、流産、多胎妊娠、着床率などにも差は見られなかった。母体年齢、精液異常、IVFの回数などから見た解析も同様であった。

 この研究結果を見る限り、媒精時間の長短は出生率に影響することはなさそうだ。しかし、研究者は「精子濃度がより高いと、どうなるかは定かではない。また、参加者がより多ければ、臨床的に意味のある差が出た可能性はある」としている。さらに注視していく必要はあるだろう。なお、日本では医療施設によって採用している媒精時間が異なるため、不妊治療を受ける際の重要なチェックポイントとなりそうだ。

(あなたの健康百科編集部)